No.114 South Africa National Anthem Issue

土曜日、カントーvs東海の前にFrance vs South Africaも見たのだけれ
どそれについては別に書くつもりも無かったのですが、案の定、騒ぎにな
りました。試合前の国歌(南ア)の件。

実際、これまで幾試合もテストマッチを見てきたけれど、前代未聞の演奏
だった。私もちょっと驚いたし、南ア国歌を“おすすめ” (No.52)した
手前、「‥これが、ですか?」とか言われちゃいそうだなーと思ってし
まったのも事実。
Matfieldなんかは、試合後の記事を見るとかなり怒ってるようでした。
でも、あれを歌った人(Ras Dumisaniさんというレゲエ・シンガー)が
非難されるべきかというと、それは違うと思うんだけど。

国歌に対する敬意という事を問題にするのならば、敬意が足らなかった
のは、奏者というよりは、あの演奏を聞いて「笑った」観客達でしょう、
多分。
例えば、或る人が、音程のはずれまくった国歌を−God Defend New
ZealandにせよLand Of My Father(尤も、Walesの人は誰しもがLand
Of My Fatherを完璧に歌いあげるに違いないと勝手に信じていますが)に
せよ−歌ってるとして、本人が一生懸命歌ってるとしたら、笑うか? し
かも、歌ってるのはポップソングとかじゃなくて国歌。私自身はあれを聞
きながら、上述の通り正直ちょっと困惑してはいましたが笑いはしな
かったし、国歌の演奏に対して笑い出すという感覚はあんまりない、気が
する。

もちろん、素人がプライベートで歌う場合と、テストマッチで何万人もの
観客の前でのパフォーマー、いわばチームと同様に国の代表、として歌う
場合とは話が違う。だけど、国歌を「きれいに歌う」事がイコール国歌へ
の敬意、というわけじゃなかろう、とは思ったのでした。そりゃ、テスト
マッチですからね、フランス側の演奏がそうだったように、あくまで高々
と、気持ちを鼓舞するように勇ましく歌ってほしい、と選手達が思うのは
わかりますが、そういう歌い方だけが「正しい国歌の歌い方」ってなも
んでもあるまい、と。

私なんかはどちらかと言えば、南ア国歌と対照的に雄々しく演奏された
ラ・マルセイエーズのほうもちょっと引いてしまっていました(これでも
かーって位、勇ましかったので少しコワくて)。あまりに猛々しい国歌っ
つーのもなあ、などと、つい思ってしまって(しかしそれを言うなら、
HAKAなんかは、猛々しく勇ましくコワイくらいでなければHAKAでは
ない、と思っているのだが‥。HAKAなら好戦的で良くて、国歌だと△×と
思ってしまうのもどうなんだか)。
そう。言い換えれば、今回の演奏がこれ程非難されるのは、単にキーが
違ってたからじゃなくて、そもそも全然好戦的じゃなかったからなので
しょう。はい。テストマッチの場には確かにふさわしくなかった。
だから、改めて言うけど、問題はあの場にあの歌い手を選んだコーディネ
イターにあるのであって、演者の「国歌に対する敬意」云々ではないと思
う。
あの場じゃなくて違う場(例えばレゲエのコンサート会場)だったら、
あれはあれで、きっと空気の和む演奏だったはず。観衆も一緒になって皆
で友好的に和気あいあいと合唱したことだろう、これ以上ないくらい平和
的な国歌‥。「いいじゃん、レゲエ」‥by四半世紀以上前のロック少女
(←聞き流しましょう)。

‥と、思ったのですが、世の中の98%の人(推定)は、あれを聞いて「怒
る」か「笑う」かだったようで、ABsの選手も「なんや、あれ」って笑って
たらしい。自分の感じ方って少数派なんだなーって思い知らされる事が
時々(<しょっちゅう)ありますが、 今回も。

‥などと書いた後に先程You Tubeで、Ras Dumisaniさんが、「あのパ
フォーマンスはマイクや機器が悪かったせい」とかって反論しているプ
ログラムを見ました。「普段は、こう歌ってるんだ」と歌ってみせて
るのですが‥これが笑うしかない(笑ったらいけなかったんじゃないの
か?)シロモノでした。
見ないほうが良かった、というか、Dumisaniさん、反論せず黙ってたほ
うがイイですよ、絶対。
なんか、真ん中と最後のパートの旋律が、南ア国歌のそれじゃなくて、
ラ・マルセイエーズになっちゃってます(爆←笑っちゃいかんって)。悲し
いけど、平和主義は好戦主義に流されちゃうんだなあ、と思いました。
‥戦争反対(と言うしかない)。
                        
                           2009/11/18
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