No.83 Six Nations: Scotland vs Ireland
昨年素通りしてしまったSuper14(No.53参照)。今年は一応、相変わ
らずChiefs中心にボツボツとですが、見ています。しかし、それにして
もSix Nations!“Super14に気をとられてSix Nationsがおろそかに”(
No.31)なんて事、今年は全くありません。もちろん各国の力が拮抗してい
てエキサイティングだからというのも理由ですが‥。
第4週 Scotland vs Ireland。
国歌。テストマッチでの“国歌”はやっぱりいいなあ(No.52)。ホーム
のScotland国歌“Flower of Scotland”。バグパイプの響きも特別だけれ
ど、バグパイプの音色が鳴りやんでから歌声(競技場を埋める観衆の大合
唱)が一段と誇らしげに高まるのがとても素敵。
試合。Six Nationsの中で、新参国Italyを別とすると最も成績の振るわ
ない国がScotlandです(泣)。対して、Irelandは、2年前のW杯では予選
リーグ敗退の苦杯を嘗めるも、今季Six Nationsではここまで3連勝で勢い
に乗っています。が、その好調Irelandに一歩もひけをとらないScotlandの
プレーぶり。ScotlandがPGで先制。 Irelandもすぐに同点に。又Scotland
が3点を入れて‥と、互いにPKのみによる得点で僅差のままゲームが進む。
決定力で他国に劣るScotlandの貴重な得点源となってきたのが、この日
#15で起用のクリス・パターソンのPG。トライがとれなくても彼のゴール
キックで点を積み重ねるのがScotlandの戦い方。このスタイルだけとりあ
げれば、確かに地味だし面白みに欠ける。でも、パターソンのキックの正
確さときたら。彼、ここ数シーズン、ゴールキックを一度も失敗していな
いらしい。これはもう芸術作品か文化財みたいなもの。Irelandの#10オ
ガーラ(我家では知人の名字から『小河原君』と発音されている)も優れ
たキッカーとして定評のある選手だから、華やかなトライシーンのないP
G合戦が、とても引き締まったものとなる。
そんな中、39分(頃)。
自陣15m位の地点からScotland#11マックス・エヴァンスのキックした
ボールが、そのまま走って来た彼の胸に、ワンバウンド、ツーバウンド‥
してスッポリとおさまる(キックを蹴り込んだ位置といい、スピードとい
い、「おーっ!」)。突如として興奮のるつぼと化すマレーフィールド。
そう、このまま走りきってトライ!と思える状況です。
しかし、まず、FB(直前のプレーで敵陣へ上がっている)の位置に代わっ
て入っていたオガーラ君が何とかすがりつこうと身体を投げ出しながら手を
伸ばす(その手はしかし、エヴァンスに届かなかったのですが、それでも、
彼が迫って来る、という事で余裕を持って独走させなかったのは重要)。
オガーラ君を振り切り、体制を立て直してタッチライン沿いにゴールライ
ン目指すエヴァンス。そこへIreland#11フィッツジェラルドが飛びつく。
「あーっ!」そしてフィッツジェラルドのタックルを受け倒れながらのエ
ヴァンスからのパスが、走り込んできたScotland#10に渡った!(「きゃー
っ!」)トライ!、と思った瞬間、吹っ飛んできたIrelandの選手が#10を
タッチに押し出した。うおおおおーっ!(この数秒間、「おーっ」「あーっ」
「きゃーっ」「‥うおおおお」と叫んだり唸ったりしている私って、傍から
見ると凄く不気味、というか、アホ丸出し‥)
いやー。あれはトライ!ですよ、普通だったら。普通じゃない中でも特別
だったのが、最後のトライセーヴィングタックル。決めたのはO’Driscoll。
余りに見事だったので(同じ試合を見直すなんて滅多にしないのに)再放
送でも見ましたが、O’Driscoll、エヴァンスがキックした時にはDFライン
の最前列あたりに居て、キックが背後に飛んでエヴァンスが走ってゆくの
を、振り向いて後追いする形になっています。オガーラ君が振り切られ、
フィッツジェラルドが何とか食らいつけどもScotlandのパスが#11→#10
と鮮やかにつながった(他にはもう、Ireland陣前、即ちScotlandから見て
前方には誰もいず、トライラインが待っているだけ)、その瞬間の必殺タッ
クル。確認したところ、エヴァンスがタッチ際を疾走する間(オガーラ君と
フィッツジェラルドはもちろん彼めがけて必死で走っている)、
O’Driscollはどうやら#10を見てるんですねー。‥凄すぎる。
絶対的なトライチャンス!→だけどDFが粘りに粘って直前で何とか押さ
える!→しかし絶妙なタイミングで走り込んできた選手にラストパスが渡っ
て最終的にはやはりトライ! というシーンを、私もウォッチャーとしてこ
れまで何度も目にしてきたけど、O’Driscollのあのプレーには、単に経験
値と呼べない、心底「まいったー」と言いたくなるものがありました。
結局、後半に1トライをあげて逆転したIrelandが22対15で制したのです
が、決定力不足と言われるScotlandが前半終了間際のこの場面でトライを
とれていたら、全く別の結果になっていたかもしれません。1つのトライを
防いだだけではなく試合そのものを救ったプレー‥(いや、これでも
Scotlandを応援していたんですが)。
‥というわけで、このプレーに魅了されていた私の1週間でした(爆)。
しかし、冒頭にも書きましたが、何というか、最近、私的にはスーパーラグ
ビーよりもテストマッチ!なんです。テストマッチが魅力的なのは当然とし
て、北半球(と言ってもEngland,Wales,Scotland,Irelandを指しているの
ですが)のテストマッチに惹かれる、というのは何なんだろう(原点回帰か
しら)、ここ数年専ら南半球ラグビーに浸ってきたのに、と少し意外ながら
も、自分の触覚がそっちを指しているんだから素直に楽しんでみよう。そう
思っています。
振り返ればラグビー観戦歴が10年を超えたあたりで何となく自分なりの視
点が定まってきた気がしますが、更に10年ほどがたち、又少しそれがはっき
りしてきたというか深まってきたというか。深まった、なんて言うとちょっ
と自慢気ですが、誰かの意見に左右されることなく誰に薦めてもらうでもな
く、自分にとって大切なものは自然と見えてくる、そういうところはありま
す。
先入観なく余計な事を考えず、ただ見ている内に目を留めさせられてしま
う、心を引かれる、そういうラグビーとの出会いが新シーズンもきっとある
でしょう。どんなプレー、どんな選手に出会えるか、楽しみです。
2009/03/20 佳
(C) 2009 Copyright Kayoko Hosokawa All Rights Reserved.