No.87 pure Ireland

 ワールドラグビーの守備範囲/観戦範囲が、南半球に著しく偏っている私、
これまでまともにヨーロッパ選手権Heineken Cupも(録画したりはするも
のの)見た事がなかったけれど、虫の知らせ(はあ?)か、珍しく(いや
初めて、だ)見ようという気になった。

 今更だけど、ヨーロッパのクラブチームってこんなに多国籍だったんだ。
アルゼンチンの選手やらワラビーやらキウィやら‥。NZの選手達のヨーロッ
パ行きの話題を目にする度、「この人も行っちゃうのかあ。遠い北半球(←
?)の人になっちゃうのね」(発想が「NZ在住」である)と淋しく思うもの
の、行ってしまった後は観戦範囲からはずれた遠い北半球(笑)のどのチー
ムにどの選手がいるのかなんて全然頭から抜け、気にも留めていないから、
あらーニュービー君こんなとこにいたんだー、とか、結構新鮮な驚きだった
りして。ニュービー君はともかく、Leinsterのスタッフ席にJono Gibbesの
姿(No.32参照。去年Chiefsを引退したのですが、LeinsterのFWコーチに
なってたんですねえ)を発見した時には、咄嗟に「わ、私も北半球に行きた
い!」とか思ってしまった(完全に血迷ってる)。欧州チーム、来年からは
真面目に見るぞ。

 今日(昨夜5/23)の決勝はLeinsterが初優勝。
#10に入ったJonathan(Jonny)Sextonという若手の選手が良かった。#10
というのは、この前『rugby football』のポジションの項で書いたように、
要求されるものが高く、それをほぼ完璧にこなせるっていうのは、国代表
クラスの、世界でも一握りの人達だと思ってるのだけど、ジョニー君、決
勝のプレッシャーをスッと受け流すような軽やかな(「軽い」とは違う)
プレーぶりが非常に印象的だった。“小河原君”の後継者として注目しよう。

 そして、Leinsterと言えば、Brian O’Driscoll である。

 一流選手達が国境を越えて活躍するのは当たり前、そういう時代なのに、
前にも書いたけど、この人はIrelandから出てほしくない、と思ってしま
う(No.66)。何故なのか。彼を見ていると、Ireland的なもの、Irelandが
大切にし続けているもの、Irelandになくてはならないもの、の“芯”、と
言ったらよいのか、変な表現かもしれないけれど“Ireland”という原石
が研磨されて或は風雨に晒された時に最後に残るもの、そういうものを連
想してしまう。

 まじりっけなしのアイルランド。アイルランドの純粋。

 この間から彼の事ばかり書いてる気がする。‥見たら書かずにはおられな
くなる選手なのだ。
 でも、本当は考えたくもないけど、彼も30歳を過ぎ、「オドリスコルを
見る」というラグビーウォッチャーにとっての至福の機会は、この先そん
なに長く多くはあるわけではないだろう、と、告知されない内に予め心の
準備をしておくかのようにふと思う。
 今年のIrelandのGrand Slamや、Leinsterの優勝。
どちらも、決して高いオッズで予想された結果ではなかった。個人として
は始終スポットライトを浴びているものの、チームとしての華々しいタイ
トルや花道には縁遠かった彼。まるで運命の神様が、彼が退いてしまう日
が来るその前に、栄誉を与えよう、栄冠を手にする喜びを味あわせてやろ
う、と、はからったかのように感じてしまう。もちろん、Grand Slamや
Leinsterの初優勝が達成できたのが彼一人の成果であるわけはないし、
それに、引退、なんていうのはあくまでいつの日かの事であって、O’
Driscoll、まだまだいけるけど。

 4年に一度のBritish & Irish Lions(今回の遠征先は南ア)がもうす
ぐ始まる(お願いだから、せめてテストマッチだけでも放映して!)。
O’Driscollにとってはこれが3度目(もしかしたら最後)のLions Tour。
まずはひと月以上にわたる遠征を今年は最後まで無事で終えられる様に、
と、そして、Six Nations王者とヨーロッパクラブチーム選手権覇者の称
号に続いて、Lionsとしても最高の結果を掴める様に、と、ラグビーウォッ
チャーはIrelandの空へ向かって祈りを捧げる(‥‥‥しかし自分が住んで
いる場所が北半球か南半球かもわかっていない人なので、方角はでたらめ←
笑)。 

                        
                           2009/05/24 佳
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