No.92 6月のゲーム(観戦編その3)
観戦編 に入る前に、一言。
『rugby football』(他に浮かばなかったとは言え、大それたタイトル)
の稿で、センターCTBについて、「センターのアタックはあくまでタテ」と
書きましたが、無論、ヨーイどん!で脇目もふらずまっすぐ前方に伸びた直
線を走ってゆくような単純なものではない。如何に効果的にタテをつける
か(もしくはチームメイトにタテをつかせられるか)、が見せ所(観戦者か
ら言えば見所)、そんな事は言うまでもないのですが、実は、先日「タテを
効かせるためのヨコ」と書きながら自分で具体的にイメージしていたのは、
瞬間的にちょっと制止するように自分のスピードは殺して真横に浮かすパス
(でチームメイトにタテをつかせるプレー)だったりしました。しかし、
Wallabies vs BarbariansでのJimmy O’Connor(Season OpeningのItaly
戦で、FBとして、何とハットトリック―3トライ―のテストマッチデビュー
を飾ったそう)や Sonny Bill Williamsの(彼らしかやらない/やれない、
わけじゃなくて、上手な人なら誰でも出来るんでしょうが、あの項を書いた
すぐ後という折も折だったので非常に印象に残った)「タテを効かせるため
のヨコ」テクを目にして、うむーヨコに動ける人がタテに切れ込むからこそ
効くわけだなあ(やはり先日の表現はちょっと言葉足らずだったかも)、と
改めて思いました。
それにしても、あの、ずらす、というか、ずれる、というか、の動きって、
どうやったらできるの、あれだけはさっぱりわかりません(←あれだけは、っ
て、他のテクニックはわかるっていうのか。大嘘ついてる)。
さて、CarisbrookにFrance仏蘭西を迎えてのABs2009シーズン初のテスト
マッチ(6/13)。
試合前に話題になっていたのはABsのケガ人の多さ、言い換えれば、ケガ
で戦列を離れている“正”メンバーに代わって黒衣を着る選手達や若手達が
どこまでやれるのか、が一番の注目点でした。例えば3列、“正”メンバー
のMcCawにしろSo’oialoにしろ50キャップ以上のベテランだけれど、この
日のスタメンは、6に入ったKieran Readが昨年末の北半球遠征ツアーで3
キャップ、7のAdam Thomsonが9キャップ(しかも彼の本職はブラインド
FL=6)、8のLiam Messamは(やはり昨年末のSeason Ending Tourで獲得
の)1キャップのみ、ついでに終盤Thomsonと交替で出場したTanerau
Latimerはノンキャップ(この試合で初キャップ)、又、やはり50キャッ
プ以上のAli Williams(ロック)の穴を埋めるのも同じく初キャップの
Isaac Ross、という具合。
で、先に結果を書いちゃうと、この試合、ABsが負けたんです。これ迄
“W杯の舞台”で“よもや”の敗戦という以外に(=つまり通常の場合に)
はABsが仏に負けるのを見た事がないので、ショックというよりも、ふー
ん、負ける事もあるんだあ、という感じで見ていました。
そりゃ、粗かったです。ミスも多い。それを“正”メンバーとの差のせ
い、と言い切るのはたやすい。ベテランとの経験の差が歴然、そう言うべき
なのかもしれない。
‥でも、正直、全く個人的な感覚だけれど、昨日の試合、私としては見苦し
くなかった(って変だな、見ていて苛立たしい感じはなかった、とでも言え
ば良いのかな)。経験の浅い選手達のプレーぶりから、結果を恐れずベスト
を尽くしている事が伝わってきたし。「子供の試合じゃないんだから、“頑
張ってたからそれで良し”とは、勘違いもはなはだしい」とお小言が飛んで
来そうですが‥、うまく説明するのは難しいけれど、ただ頑張ってれば許す
という話とも違って、何か、こういう事は必然なのかな、という気がする。
Ali Williams、McCaw、So’oialo、 DC‥“おなじみ”の顔ぶれが、
2011年のW杯に“当然”のように揃って、“期待通り”の活躍をして、それ
でもって優勝‥今更そんな単純な筋書きを疑いもなく信じ込める人などいな
いでしょう? だったら、どこかで、ワールドランキングトップ“常駐”の
座やプライドさえ捨てる覚悟で新しい血を入れていかなきゃ、試していかな
きゃ。(と思うので、私的に不満があるとすれば、この試合の結果ではなく、
このメンバー選定が、積極的なチャレンジというよりはあくまで“故障者の
代替”という建前で行なわれている事です。)
フレッシュな選手やフォーメーションを試す、という視点で見ていくと、
(以下、あくまで私の印象なので、それが、監督Graham Henry の今後の方
針と同じとは限りません←全然違うかも‥笑)
・ロックは、今回のように片方にベテラン(Brad Thorn)がいるのであれ
ばもう一方はRossのようなフレッシャーでも面白い。
・#7にはThomsonよりはLatimerを置くべきだろう。
・#13がSmithもしくはKahuiでないのであれば、
Nonuを#12ではなく#13に持ってくるべし。昨日の仏戦では#12にNonu、#13
にToeavaだったのですが、何で逆じゃなかったのかなあ。後半、Toeavaに
代わってMcAlisterが入り#12(セカンドファイブ)、Nonuが#13にずれまし
たが、その並びのほうがいいと思う。
ところで、出場しなかったけど、ベンチにはMasagaまで居たぞ(一旦落
選したけど、Wulfがケガしたため、Juniorから急遽招集されたらしいです)
仏との次の第二テストでも、どんどん試してほしいです。
W杯を、“手段”なんかにするな(No.88)と訴えているこの私が、神聖なテ
ストマッチを、“試す場”にしろ、などとは一体どういう事だ、と自分でも
思いますが、ABsは、そんな綺麗事に背を向けるくらい、必死になるべきな
んだ。2011年にタイトルを獲るためのチーム作りを、なりふり構わずしてい
かなくては。
ああ、そうだ。今書いていて気がついた。
昨日の試合、ある面みっともない負けであったにもかかわらず肯定的に捉え
られたのは、フレッシャーの面々達の、自分達が仏より格上だなんて微塵も
思っていないなりふり構わぬプレーぶりに、逆に心惹かれたからなのだ。こ
んな風にプレーするABsが見られて、(少しだけ)嬉しい。
先週迄、珍しく時間的に余裕があったのですが、これから当分は結構タイ
トな状況になりそうで、以降の観戦編が順調に行くかどうか危ういですが、
とりあえず今日はこれで。
2009/06/14 佳
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