No.138 Japan vs Samoa & HK Bledisloe Cup
久しぶりに自由な時間のある土曜日。
Bledisloe Cup(香港)の前に、まずはJAPAN vs Samoa(秩父宮)を観戦。
Samoaの、試合の入りが、過去にない程(もちろん、対JAPAN戦では、という
意味ですが)気合いが入っていたので、「これくらい気合いが入ったSamoaに
勝てるようならJAPANもそこそこ、ってことなんやけどな(=awayとは言え
Samoaが勝つんやろうな *注:後述)」と思っていたらあっという間に、
PG、トライ&ゴールで、JAPANが10対0として「あら‥」。その後は、
Samoaの反撃をJAPANが凌ぐという形で、Japanがリードはしているものの
Samoaが押し気味の流れで前半が終了。
後半、SamoaはSOを下げ(前半「イマイチ」と思っていたので、大きく頷き
ました)、SHのフォトゥアリイをSOに持って来た。日本ではCrusadersの
SH(但しエリスではない‥笑)と言ったほうが知られていると思いますが、
この前、ITM Cup(Hawke‘s Bay)で見た時(No.135参照)にも、やっぱり
SOとして出ていて‥捌けて蹴れて組み立ても出来て自分でも仕掛けられてキ
レがいい、一人二役以上の存在感でした。実は、エリスはあまり好きではな
い私としては、この人(フォトゥアリイ)のほうがAll Blackになっても良さ
そうなのにぃー、などと思っていたのですが、‥Samoa代表だったとは。
これもNo.135参照で書いていたように、Samoa出身の選手が皆Samoa代表に入
ったら凄いぞと思っているくらいですから、Samoa代表で頑張れ!という気持
ちもあるのですが、
(Samoa代表ってことは)All Blacks入りは無いってことか、とがっかりす
る気持ちもあって、ちょっと微妙。
試合のほうは、後半Samoaが点差を詰める中、JAPANも再び引き離す機会も
あったのですが、結局フォトゥアリイのトライで逆転され10対13。
Samoaが、勝利を、文字通り飛び上がって喜んでいたのが印象的だった。(
JAPANに対して)「勝って当然」とは全然思っていないんだな、と。そして、
Samoaにそう思わせるほどまでに、JAPANが強くなった、という事なのだろう
な、と。そう、確かに、JAPANが勝つ可能性も大いにあった。
「でもさあ」と、つい言いたくなる。つい、と言うか、毎回書いてますけ
ど。
終盤なんて15人中7人が海外出身の選手ですよ。日本国籍を取っている人も多
いから“外人”とは言うまい。純血主義や国粋主義でもあるまいし、海外出
身者が多い事が違和感の理由そのものではない(ABsだって色んなルーツの選
手が集まってる)。けれど、どうしたって、このJK JAPANが“日本らしいラ
グビー”をやっている/追求しているとは思えない。
JKやらMickさんやらが「JAPANを強くしようとしてくれている」のだから「
有り難やー」と感謝しなきゃバチが当たる? ‥でも、普及活動とか、いわ
ゆるラグビー・クリニックみたいなところでドンドン教えてもらえるのであ
れば大歓迎なんだけど、JAPANっていうものを作り上げていくのは、ちょっと
違うんじゃない? 距離感がどうにも拭えない。
今日の試合後のインタビューにたどたどしいながらも日本語で答えていた
JKには、外部の人間ではなく日本の監督、という姿勢が見られたけれど、そ
れでもこの距離感を埋めるには至らない。
で、Bledisloe Cup。
この2国を見ていると思いますもん、WallabiesはやっぱりWallabiesやなー
、ABsはやっぱりABsやなー、って(無論良い意味で)。
JAPANも、見ていて「あー、やっぱりJAPANやなー」と思える試合をしてくれ
ればいいんだけど。勝ち負けとかランクとかより。今日の試合でSamoaに勝つ
としたらモールだったと思うのですが、モールディフェンス無策の相手に対
してモールで勝ってもあんまりなあ、という感じで見てました。ABs相手だっ
て勝つくらいのつもりでそれを武器にしていく、っていうなら別だけど。
* 注: 私は例によってJAPANにシビアなのでこう思っていたけど、今日
のSamoaのメンバーはいわゆる主力抜きだから「勝って当然」なのはJAPAN
のほうだったという見方も。でもどっちにせよSamoaとかTongaとかFijiと
かの国は、W杯の時とそれ以外の時とは“別物”と思っていたほうが良いわ
けで、Pacific Nations Cupで勝ったからW杯で勝てるなんて考えるべきで
はない。
勝ち癖というか“ノる”ことも大事だから勝ち星を増やす事に意味が無い
とは言わないけれど、
W杯をJAPANが一体どう戦いたいというのか、肝心の点が、私にはいまださ
っぱり見えません。
ところで、今月の『ラグビーマガジン』のサニックスの特集を読んで、監督
の藤井さんみたいな発想が、世界を前にしてのJAPANのトップにはむしろふさ
わしいのではと少し感じたのですが、来週のロシア戦では藤井さんがゲスト
解説との事で、(今日は副音声=会場音のみで観戦したけれど)ロシア戦は
解説つきで聞いてみよう、と思っています。
ジャパンの話に戻りかけてしまいましたが、再びBledisloe Cup。
Wallabiesは、せっかく“Wallabiesらしい”スピードでABsを出し抜く幸先
良いスタートを切ったのに、Tri Nationsの時から(いやもっと前からだな)
不調のGKがこの試合でも悪く、畳みかけて点差を広げるところまで持って行
けず、足踏みしている間に逆にABsに逆転を許してしまう。
それにしても、JAPAN vs Samoaの後でこの試合を見たら、展開の速さもさ
ることながら何より前へ出る時の勢いというか、特にABsの、当たり前の事
ですがランナー(受け手)のスピードを殺さないパス‥それともパスが出る
ところへ走り込んで来ると言ったほうが正解なのでしょうか‥がうまいなあ
、とつくづく感じました。要するに、個人が速かったり強いのは多分ある程
度どこの国でもそうなんだろうけど、ABsは基本プレーの技術/精度の高さが
抜きんでている気がする。教科書通りの技術。プラス、教科書では身につけ
きれないもの、その絶妙な融合。
で、技術プラス才能、DNA、Xファクター‥e.t.c. 羨ましくなるような力の
ある選手たちが、それに甘んじることなくというか、まるで“後がない”試
合を戦っているかのごとくのプレーをするのだからそりゃ凄い。
全員が出し惜しみのない体を張ったプレーをしていますが、キャプテン
Richieの、何があろうが誰が来ようが行ってやる!みたいな必死さ(
determinationっていう表現が一番ピッタリ)が象徴的だった。
しかし。
ランナーの勢いを削ぐのではなく増す、そういうお手本パスをつないでい
くABsの効率の良さに比べると、Wallabiesは不必要なくらい(DFラインと
の距離を取るという意味があるのだろうけれど)下がったところから走り始
めるので、<効率>は良いとは言えない、はずなのですが‥‥関係ないです
ね、そんなの。止まってボールをもらおうが、下がってボールを取ろうが、
走る走る。なんていう走力でしょう。
真偽はともかく、個々の能力を競ったらきっとWallabiesのほうがABsを上回
るんだろうな、と真剣に思いました。カートリー・ビール、O’Connor君、ア
シュリークーパー、ミッチェル君、ギタウ(あのキックは何とかして)、い
やー、最高です(どうしても#10の彼の名前を挙げるにはちょっと抵抗が)。
Tri Nationsの最終戦でもすっかり“行け行けWallabies”モードになって
いた私ですが、今日も何だかそんな感じでした。7回くらい「おーっ」とか
ってTV見ながら声が出ましたが全部Wallabiesだった(笑‥その内4回くらい
はビール)。
後半の入りの5分は怒濤の勢いで、最後にABsが辛くもボールを奪い返した
のですが、その直前でElsomが突っ込んだ時には「右やろーっ、そこはーっ
!」とかって叫んだり(右にビールがいました‥爆)。
‥ヘンリーさん、Zacを呼び戻さなきゃ、私はこのままWallabiesファンにな
ると思って下さい‥←って、これはもちろん冗談です。
あれで取り切れず<またも惜敗>になったら悔やまれるーなどと思ってい
ましたが、今日は最後の最後に(ホーンが鳴ってから)Wallabiesがトライ。
これで何と24対24の同点。残るはコンバージョンのみ。
これの前から、不調のビール、超絶不調のギタウにかわり、キッカーをつと
めていた(見事成功し、副音声の解説者に「Where have you been?」(「そ
うだ、きみがいたじゃないか」みたいな感じでしょうか)と言われてました
)O’Connor君が今度も狙う。
たかが一蹴り、されど、屈辱の10連敗にケリをつけるためには絶対はずせな
い大事な一蹴り。
なんでこんなに落ち着いていられるんだろ、と感心するほど力み無く自信を
持っての一蹴りは、ポストのど真ん中に向かってのびやかに飛んで行った。
祝Wallabies勝利!
去年の東京でのBledisloe CupではO’Connor君もパッとしなくて
Wallabiesも全体に元気が無かったけど、今日は良かったなあ。観客も日本み
たいに<ABsオンリー>みたいな感じじゃなく、ラストの攻防でABsがハイタ
ックルをした時にブーイングが起こっていたので安心しました(笑)。
ABsは、今年は負けないのではという気さえしていましたがついに初黒星
(今季)。
ま、来年のW杯イヤーに向けて一層気が引き締まって良いのではないでしょう
か。
これからヨーロッパで、グランドスラム達成なるか? SBWの初テストは如何
に? と、まだ一応(一応って、‥ヘンリーさーん、やっぱりZacがいないと
‥‥‥冗談ですってば)興味はつきません。 10月30日 佳
2010/10/30 佳
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