かよこのノート

 No.16 I'm not supporting Japan's bid for the 2011 rugby World Cup

 2011年ラグビーワールドカップの開催国が、日本、南ア、NZの中から11/17に決定されます。日本のファンの多くは、自国でラグビーの祭典ができるのなら、世界最高峰の選手や試合を間近に見られるのなら、そんな素敵な事はない、と夢見ているかもしれません。が、「日本でのW杯」は本当にそんなに素晴らしいものになるでしょうか、素晴らしいW杯にできるのでしょうか? ・・残念ですがNOと言わざるを得ないので、私は日本開催に反対です。
 競技場の大きさとか電車の速さ(日本のPRヴィデオには富士山をバックに走る新幹線が・・)だけではもちろんダメ。大事なのはいかに皆でラグビーを愛し、楽しむか。
簡単な事のようですが、日本でそれができるのか、です。南ア、NZならばラグビー人気は強大で、国内リーグ,テストマッチを問わず集客力があり心配無用ですが、日本は? W杯を開催したはいいが(日本や強豪国の試合は満員になるとしても、他の)試合会場がガラガラ、というのでは話になりません。動員作戦といったって、ラグビーを知らない観客がいくら入っても雰囲気は盛り上がらないでしょうし。世界中からの人達が満足する大会が運営できそうにない現状での招致は、時期尚早だしラグビーに対して失礼だ―まだまだW杯開催の資格はない―、という気がします。
 日本のラグビー競技人口は12万人以上(世界第4位)だ、だから立派なラグビー国だ、と日本協会はアピールしていますが、実体は? 12万人なんて人口比にすれば大して自慢できる数字ではないし、サッカー競技人口は80万というのだから日本ラグビーはサッカーの6分の1未満の周知度,人気度にすぎず、しかも12万人といっても年々減少しているので胸をはれる内容ではない。(12万人もやっててそんなに弱いのかと言われちゃえば返す言葉もないし。)
 他には何が日本のウリかというと、高校/大学ラグビーのようです。確かに、早明戦の様子でも見せて「日本では大学生がナショナルスタジアムを満員にする」と言えば他国の人達は感心するでしょう。・・詐欺とは言いませんが、これもまた実体とかけはなれたアピールです。
 尤も、そんな事は、少なくとも私達日本人は十分承知ですよね。日本の招致賛成者の多くは、「日本でW杯? いいじゃん、どんどん呼んじゃえっ」という“お気楽派”でも、「日本はW杯開催にふさわしい国だ」という“勘違い派”でもなく、恐らくは、「人気低迷の日本ラグビーにとって、W杯の開催が復活の起爆剤になれば」と善意で考えている人達なのでしょうから。
 では、開催が決定したら何がどう変わるのか、 
・TV放映が増える:地上波での放映が殆どない(我らが国営放送で年に(※1日じゃなく1年ですよ!)何回ラグビーの映像が流れるか、その回数をIRBの人達が知れば、W杯日本開催がどれ程の大冒険かがわかり、いくらなんでも日本での開催に尻込みするに違いない)現状から、大リーグ並にニュースや試合が流れるようになる? ・・そうなればいい、と私も思います。
・一般の関心が高まる:大半がそもそもRugbyWorldCupの存在すら知らない国民なので、せいぜい「へぇラグビーにもW杯があるんだ、ふ〜ん日本でやるの。なら、1回行ってみようか」位だと思いますが・・まあ、それが新たなファン誕生の第一歩、と期待するとしましょう。
 日本ラグビーの未来の為にW杯開催を、という方々にもう一度おたずねします。
2011年に日本にW杯を持ってくる事が“解決”になりますか? 日本でW杯を開けばそれで国内のラグビー熱が高まりますか? 代表チームであるJAPANが強くなるのですか? ・・「違う」と言いたい。「順序が逆だ」と。
 サッカーでさえ、W杯の開催以前にまず改革がありJリーグの成功があったわけです。
しかもW杯招致前に何度も国際級の大会を成功させています。W杯があったから今のサッカーの人気があるというわけではないのです。
 何よりも、日本ラグビー協会とラグビー関係者が、ラグビー人気を高める為、普及の為、代表チームを強くする為、まず自ら最大限の努力をする。それが第一。そして、少なくともある程度の成果を出した上ではじめてW杯招致の最低限の資格が得られるはずなのです。ラグビー協会はそれだけの努力をしたのでしょうか? あれもやった、これもやった、考えられる事は全部やってW杯開催が最後の手段だ、というならまだしも、旧態依然のまま諸処の問題や批判は棚上げでともかくW杯招致ありき、という現在の協会のあり方は到底納得できません。多くの人達は、W杯開催を勝ち取る事が優先で、協会のやっている事(&やっていない事)にはあえて目を瞑っているようですが、このままこの協会の元でW杯を開催するなんて、それこそ日本ラグビーの未来の為を考えたら恐ろしくて、私はとても目を瞑っていられません。願わくば、協会含め今までの体制を一新し、全力投球で日本ラグビー再生に取り組む流れを作って、しかる後に、ちゃんと資格のある国としてW杯をホストしたいものです。
 今回日本の開催権獲得(しませんように・・)確率はどの程度か。経済力だけは評価されているようですが、日本が選ばれるとしたら、「ラグビー強豪国以外での開催」への道,「ラグビーのグローバル化」が最大の観点でしょう。日本の応援に名乗りをあげているラグビー界の大物達・・前大会優勝キャプテンMartin Johnson, 自国の立候補にもかかわらず日本支持を表明したNZの国民的英雄Jonah LomuやJohn Kirwan等々・・彼等にしても、日本での開催が、日本やアジアそして世界のラグビーのためになる、と信じる善意の人達だと思うので、それは率直に有り難いと感じます。でもやっぱり「違う」のです。W杯開催で日本のラグビーが本当によくなるわけじゃないし、まして日本でW杯をやることでスリランカやタイでラグビーが盛んになるか?って・・もしも日本協会がそう信じ込ませようとでもしているのならそれこそ詐欺(いくらなんでもそんな事はないと思いますが。ただ気になるのは『ラグビーマガジン』の“(日本協会は)日本開催を「アジアの総意」であるとしているが、ところがこの総意を証明するアジア各国からの承認や賛同のメッセージはなく”というリポート。不信感が募ります)。
 むしろ南アは、南ア以外のアフリカ大陸の国向けの普及と強化,アフリカ大陸のラグビー発展の為の大陸代表チーム創設などを行なっているらしいです。結局“ラグビー強国以外にラグビーを広める”という点からみても、日本が南アやNZに優っているところはないのです。「もし日本でW杯が開催されたら・・」と漠然と期待してみても、冷静に考えて、今書いた南アの事業や、例えばAll Blacksが世界各地に遠征したりそうした試合が放映されたりする事のほうが、日本でW杯を開催するより、よほどラグビーファンを増やす事になるのだと思います、実際は。
 さて、日本での開催は日本ラグビーが本当にあるべき姿になってからの遠い楽しみとするとして、2011年は南ア?NZ? どちらも環境抜群、ラグビーに対する理解も大。
南アのほうが経済,キャパシテイ,(欧州からみた)利便性で有利、という見方もありますが、NZのラグビーの伝統というかラグビーへの愛情というものも捨て難く、まして今回が(NZのような小国にとって)W杯開催最後のチャンス、と言われる中では「だったらNZに」と言いたくなる感情も湧きます。どちらが選ばれても素晴らしい開催国になるでしょう。
 ともかく、絶対に現ラグビー協会の元でW杯開催、なんて事にならないように、「NO!!」とIRBに直訴したい(誰かこの文章を翻訳して送ってくれませんか?)。日本開催期待の声が多数な中、少数派意見とは思いますが、賛同して下さる方がいらっしゃれば嬉しいです。
                        
                            05/10/26 佳
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