No.19 Tri Nations 総括1
Tri Nationsについて長文のため2回+αでお届けします。
今年から各カードが1つずつ増え、3試合増しの全9試合となった新生Tri Nationsも、一昨日の南ア対豪の一戦をもって閉幕。早速振り返ってみます。
第一戦のNZ対豪。
去年から大不振だったWallabiesは、
直前のテストマッチシリーズ終盤にようやく復調してきたな、という感じだったのですが、まだまだ世界ランク1位を転覆させるには至らず、All
BlacksがWallabiesを、まあ大して面白味もなく下して、まずは“順当”と思えるスタート。
第二戦。
Wallabiesは南アSpringboksに何と49対0という記録的大勝。南アはスター選手の故障もあり、大会前のテストマッチシリーズ(北半球からの遠征国との対戦)でもパッとしなかったのですが、それにしてもあまりに一方的な敗戦で「Wallabiesにこの有様じゃ、ABs相手じゃ一体どうなっちゃうの?」と嘆かれ心配される始末でした。「どうなる事やら」「いやそれとも予想を覆してAll
Blacksに泡をふかせるのだろうか?」。何と言っても、去年All Blacks(05年度戦績11勝1敗)に唯一白星を挙げたチームなのですから‥。
と、妙な関心が高まった第三戦。南アボールでの試合開始直後、自陣前まで深く蹴り込まれたキックオフのボールをダン・カーターがクリアキック(蹴り返し)しようとしたところ、猛然とダッシュしてきた南アSHデュプレアがチャージしてそのままトライ。おおっ、本当に起きるか?!番狂わせが?!と思わせましたが、流石に、ミスを連続しておかしはしないD.Cが、その後は安定したというかいつも通りの高レベルのプレーを見せ、NZが確実に勝利を手にしました
でも、実はこの試合を見て「NZ、強すぎ〜っ! 南アは弱ェ〜」みたいな感想をのべていた人がいたのですが、私は決してそうは思えませんでした。それどころか、南アは恐ろしい、最後はちょっとスタミナ切れなのか気持ちの面なのか集中力がなかったけれど、もし、リズムにのってしまったらかなり手強いなと改めて思いました。まあ、それはWallabiesに対しても言える事なのですが。
南アも豪も、スピードとパワーは怖いくらいです。NZはもちろん世界トップのスピードとトップのパワーを誇る、のだけれど、「力技」というよりも「お手本」的。「怖い」のではなく「うまい」。南アと豪は(お手本になる技術があるのは当然ですが)とにかく荒々しく豪快で、むしろNZより「怖さ」を感じます。
ちょっとこの大会からは話がずれますが、前のW杯でAll Blacksがよもやの
敗退を喫した時にも書いた「横綱相撲に慣れてしまっている」「誰もの憧れである“All
Blacks”というプライドを大切にするあまり、“なりふり構わない”闘いを忘れてしまっている」、NZは今尚それを拭いきれていないのではないかしら。そうした面で、2007年W杯を一年後に控えて世界ランク1位を堅持し続けているABsですが、一抹の不安があります。
さてTri Nationsに戻りましょう。
第四戦。
敵地へと乗り込んだABsが再びWallabiesを押さえ込むのか、それともWallabiesがSpringboksに圧勝した勢いでABsを返り討ちにするのか。注目にふさわしい熱戦でしたが、この試合の一番の見所は、ずばりRichie
McCawの働きっぷり。毎試合彼の一挙手一投足をも見逃さない(笑)はずの私でさえついていけない「‥え、今の、Richieだよね(何で今ここにいたのに、もうあっちに行けるんだ〜)?」驚異の動きでありました。中でも圧巻はWallabies
WTB ジェラードへの、“トライ (彼にボールが渡った瞬間、豪ファンはトライを確信し立ち上がってガッツポーズをしていた)セーヴィングタックル”。パスを受けタッチライン際をゴールラインめがけひた走るジェラードに追いすがってひき倒した時、NZ人は皆「神様、仏様、McCaw様!!」と
思ったに違いない(笑)、しかも、その後すぐ立ち上がってジャッカル、ですよ!
‥凄かった。 その昔、当時ABsのスーパートライゲッター ウィルソンがダイビングトライを決めようとしていたまさにその瞬間、吹っ飛んできたWallabies
SH グレーガンのタックルでタッチライン外に放り出された、という事があり、今や伝説となっていますが、私にとってはそれを遥かに凌ぐシーンでした。‥しかしこれには後日談というか余談があり、NZ国内でこの試合のMcCawが「神様、仏様」ならぬ「鳥だ、飛行機だ、いやスーパーリッチー(スーパーマン)だ!」(←ホントにこれがNZの新聞の見出しなんです)とまで祭り上げられているのを見て、そこまで言うか〜と苦笑を禁じ得ない気持ちになり、ちょっとひいてしまいました。ま、All
Blacksのキャプテンですからね。イチローと宮里藍と早実の斉藤くんとをあわせても全然足りない<国民的ヒーロー>なわけだから仕方ないのかもしれませんが。
第五戦。
豪対南ア。これも大接戦でしたが、ノーサイド寸前にWallabiesがトゥキリからロジャースとつないだトライで辛くも逆転勝利。トゥキリは効いてましたね〜、前回W杯の頃よりいいんじゃないかな。ロジャースはというとやっぱりつくづくうまいです。パワフルなWallabiesの中にあって、この人のラグビーはとにかくセンスを感じさせる。華麗さよりは地道なプレーにひかれる傾向の私も、彼の天才肌のプレーを見るのは大好きです。
第6戦以降は、総括2に続きます
06/9/11 佳
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