かよこのノート

 No.39 2007RWC Quarter-Final

 一日目。
 Australia vs England。
『決勝トーナメント前』の文章で、Englandは(予選プールでは)
Wilkinoson頼みだったけれどWallabiesを倒すには(前回大会決勝でのよう
な)“チーム・イングランド”としての迷いの無い闘いが不可欠、期待しま
しょう、と書きました。そう書きつつも、実際にはまあ難しいだろう、が予
想でした。ところが、ピッチへの入場や国歌斉唱の様子を見ていると気持ち
の入り具合で圧倒的にEnglandが上回っていたので、「お、これは」という
予感はありました。但、相手は何といっても得点力抜群のWallabiesだから、
ポンポンポンッとトライ量産で一気に突き放されたら逆転は無理とも思われ
たのに、Wallabiesの、らしからぬ(受けちゃってたんでしょうねぇ)試合
ぶりのせいもあり、ロースコアかつ僅差での攻防戦となりました。
Englandが最初からすごく積極的にしかけていくので「気負いすぎじゃない?
リスキーだなあ」とハラハラしていました。が、当たり前のプレーをこなす
だけじゃ勝てないんだという意思統一、張りつめた緊張感と集中力、自分達
の持ち味/強い部分に懸けてひたすら前へ前へとなだれこんでいく姿にはド
キドキ! この日はWilkinsonのキックの出来が良くなかったのですが、今
度は他の皆が彼を支えるかのようなプレーで、やっと“チーム・イングラン
ド”が機能した、という感じでした。Wallabiesはミッチェル君(童顔なの
でこう呼んでいる)みたいな勢いのあるトライゲッターを投入して立ち上が
りからフル回転で圧倒して試合の主導権を握るべきだったのに、どうして
ミッチェル君をスターターにしなかったのか‥頭が準決勝に飛んでたんで
しょうねえ。 (準決勝〜で復帰してくれたら)ラーカムのゲームが見たかっ
た、と少々残念ですが、“チーム・イングランド”の試合ぶりに心から拍手!
 同時に「これでAll Blacksの準決勝の相手がWallabiesじゃなくて
Englandになった、ABsはその方がやりやすいだろうし喜んでるだろうな〜」
(※前回、アルゼンチンが順当にいけば豪とあたる、と書きましたが、勘違
いしてました、訂正しなきゃ、と思ったのですが、訂正するまでもなく、豪
との対戦は「絶対ない」はずに‥)と疑問の余地なく思い込んでいた私でし
たが、わずか6時間後、とんでもない状況が発生するのでした‥。
 NZ vs France。
これも、下馬評で不利な側(仏)が少なくともまず“試合開始前の熱さ”で
まさっていると感じたゲームでした。All Blacksが“普通の”カマテ‥を
やったのに対し、奥まったところではなくハーフウェイラインぎりぎりまで
出てきて“迎え撃った”仏。そして結果はご存知の通り。
 予選プールが楽すぎたから心配。‥確かに、やはり『決勝トーナメント前』
にそうは書きましたが、それでもいくらなんでも仏に負ける事はないだろう
(だって、前々回のW杯で“世紀の番狂わせ”と言われた敗戦を喫した以外
全く負けてない。負けるはずない)と思っていたのに。
「あ〜あ〜なんていう試合をしてるんだ〜、まったく」と言いながら見つつ
も、少なくとも最後にはとりあえず勝って兜の緒を締める事になるのだ、と
信じていたのに。
 ありえない、全く‥。All Blacksが負けるのって一番確率が低いはずな
のに、どうして、どうしてW杯でなんだろう。それくらいなら他で負けてお
けばいいのに、他で負けていいからW杯で勝てばいいのに‥と、もう、理屈
にならない言葉しか浮かびませんでした。「あんなに強いのにW杯で勝てな
いって一体どういうことなの?」
 しかし、一夜あけて(準々決勝の残りの2試合を見たあと)つくづく思っ
たのは、勝てないのは結局弱さがあるからだ、決して絶対的に強いわけじゃ
ないからだ、という当たり前の事です。All Blacksが「強いのに(W杯で)
勝てない」不運のチャンピオンきどり(本人達がそう自覚しているわけでは
ないでしょうが)でいたら、この先も勝てない。実力を発揮したら勝てるは
ず、ではなく、勝利の可能性に全てを懸けるんだ、という気概がなきゃいけ
ない、と感じています。
 
二日目。
 South Africa vs Fiji。
もしもこの試合の日程が豪とNZが相次いで敗れた後でなかったら、南アもこ
こで姿を消していたでしょう。かろうじて勝てたのは、前日の結果(それと
プールでのTonga戦での経験)から用心に用心してともかく勝負にこだわる
戦法に徹したから。それはそれでもちろん正解なのですが、仮に「今のゲー
ムでどちらのチームが素晴らしかったか?」という質問で勝ち負けを決める
としたら、圧倒的な支持で勝ったに違いないくらい、Fijiはまさに勝者にふ
さわしい敗者でした。Fijiというと、7人制のイメージが強くてピッチを“
縦横に動き回る”人達という印象なのですが、むしろ、タテ、タテ、前、
前、の怒濤のアタック&ディフェンス で力強いのなんのって‥今のパスが、
とか、ここでの相手をかわす動きが、とか、ラインがどうのこうの、とかっ
て、頭の中で理解したり解説したりするより、とにかく本能的に「かっこ
いー!!」と震えてしまう(笑)。あのSpringboksを凌駕する速さ強さ。
きっとAll Blacksなんか(←ついに“なんか”になってしまった)よりも
凄い。さっき書いた事を繰り返しますが、All Blacksよ、実力を発揮した
ら勝てるはず、じゃない。自分達が勝つ、その可能性に全てを懸ける死闘が
必要なんだ‥。
 Argentina vs Scotland。
ここまで全てで予想外の試合(Fijiは敗退しましたが)が続いた準々決勝で
したが、最終戦に関しては「‥これはどう可能性を考えても、だいぶ力の差
がありそう。Pumasはノリにのってる感じだし‥」と思っていましたが、い
やいやどうして。もう少しで、準決勝進出の内の3つが北半球Six Nations
の国、という「南高北低」の評価を覆す結果になりそうだった、Scotlandの
大健闘でした。この試合でもやはり、ひたむきさ/集中力の大切さを今更な
がら教えられました。シンプルな事しかしなくても(できなくても)頑張れ
ばこんなにやれるんだ、って‥何か、全国の、強豪と呼ばれるチーム以外の
メンバー、特に子供達に、伝わってほしいメッセージだなあ。
Scotlandって、結構頑張るんですよね、前回大会の準々決勝でも健闘した
し。ラグビーを見始めた頃Scotlandが好きだった事を思い出し、惜しかっ
たけど、胸をはって帰ってほしい、そして、Scotlandのラグビーが又盛り
上がってほしい、という気がしました。
 さあ、準決勝そして決勝。“順当”ならば(しかし、こうなってくるとも
はや予測不能(笑))南ア優勝。「弱い」と言われたEnglandが優勝できた
ら、当たり前の連覇より一層価値あるものに‥。
一番盛り上がるのは、アルゼンチン対仏の開幕戦と同じカードが決勝戦とな
り、しかも今度は地元の仏が勝つ、という筋書き。でも、ダークホースだっ
たアルゼンチンの優勝というのも、下位国が上位国よりも輝いた今大会の象
徴としてふさわしい。‥どんな結果になるにせよ素晴らしい試合になるに違
いないので、楽しみたいと思います。 

                        
                            07/10/08 佳
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