No.40 ベスト4の各国について(準決勝後)
<England>
Englandの試合、多くの人が「つまらない」と評します。私も、03年のW杯
以前はそう思っていたのですが、03大会そしてそれ以降は案外面白く見る
ようになりました。楽勝ムードで勝てる試合がない!せいもあるんでしょ
うけど(笑)。
世界チャンプという“頂点”から一転“どん底”での低迷に喘いだこの
4年間のEnglandを見てきて(‥といってもAll Blacksを見るようにしっ
かりとは見ていませんが)、確かにひどい内容の試合もあったし、「世界
王者の名にふさわしくない」との批判もやむなしと思わざるを得ない時も
あったのですが、決して言われているほど「弱い」とは感じませんでした。
昔から(ことラグビーに関しては仏には何故か全くといっていい程関心が
ないのですが、それと大差ない位)関心の薄かったチーム(6Nationsで
好きなのはIreland,Wales,Scotland)なので、決してひいき目に見るは
ずもないのに、皆が弱いとか無惨とかっていう程悪くない、と思っていま
した。昨年末、All Blacksに敗れ、そしてArgentinaにも敗れた時、ある
ところで、‥‥でもEnglandは、決して弱くも下手でもなく、ただ、キッ
クミスとか詰めの甘さで負けてるだけという印象。FWはいいけどBKは‥と
いう声もありますが、BKもかなりのものと思いますから、出来上がって来
たら手強そう。ABs戦のトライ(トライと認められなかった攻撃も含め)や
アルゼンチン戦でのトライを見るとそういう気がします‥‥という意見を
述べました(が、誰も賛同してくれませんでした(笑))。
それにしても、今大会予選プールA組の「南アvsEngland」が一次リー
グ最大の山と喧伝されていたのはすごく疑問。England 結構地力はある
よ〜、とみていた私でさえ「南アとの対戦となると、攻撃力というか得点力
にかなりの差があるから、こりゃあ門前払いだろう」と予測したというのに、
さんざんEnglandを叩いてきた人達がどうやったら「弱いEngland」と南ア
との激戦を想像できるの?(もしかして南アを「England程度に弱い」と
思ってた?)‥ 理解不能でした。
しかしよもやこの“門前払い”カードが、決勝カード=まさに今大会の
「山」になろうとは!真っ当に考えて、相変わらず攻撃力得点力に於ける
SpringboksとEnglandの差はかなり大きい。スコアが20点30点と入ってい
く試合になったらEnglandの勝ち目はまずない。Englandが勝つ僅かな可能
性の為の絶対条件はロースコアのゲームに持ち込むこと、それに尽きると
思います。
準々決勝/準決勝がまさにそういうゲーム、すごいDFでした。“手堅く
守る”のとは全然違う。ラインはドキリとする位シャープに前に出るし、
セットプレーでも相手ボールをとってやろうという気合い満々。何より
モールとかラックとかの密集で相手がボールを確保している時、あえて
ファイトしているところがイイ(相手にとってはイヤらしい)。愚痴っぽ
くなりますが、この辺がAll Blacksとの違いです。All Blacksの場合、ど
うしても“手堅く守る”形のDFに陥って、ちっともファイトしている感じ
がしない。それでも普段は地力の差で勝てる、しかも(Springboksと
Wallabies以外のチームとなら)ある程度余裕で勝ててしまう。‥そこが
穴なんだよなあ。
決勝は多分Springboksが勝つと予想しているのですが、何となく、
England頑張れ、というか、少なくとも、準々/準決勝を上回るファイトを
期待。予想とかそういうのを完全に裏切って(この際20点30点とるくらい
ガンガンといって)ほしい!と思っています。
<France>
前述したようにまるで関心のない国で、ホスト国じゃなかったら一次
リーグで姿を消して良し(笑)と思っていた位なので特に感想なし。念の
ため言いますと、仏という国や人や文化が嫌いなわけじゃなくむしろ敬意
を持っています。シャンパン・ラグビーだって、私にはピンとこないだけ
で、多くの人にとってはとても魅力的なものなのだろうし、選手達も才能
溢れていて個性的。「ラ・マルセイエーズ」も素敵。何でFranceラグビー、
好きじゃないのか、自分でもよくわかりません‥。あ、でも正直言ってあの
監督はヤな感じ(笑)。サルコジも嫌い。準決勝敗退で、会場の二人に向か
い「ざまあ見ろ」と言ってしまいました(すみません、あくまで趣味と独断
です)。
<Springboks>
上の文章だと、私、SpringboksよりEnglandが好きみたいですが、実際
は、Springboks‥う〜ん、好きというのとはちょっと違うけど、すごく興
味のあるチームです。All Blacksをしっかり見るという事は、Springboks
もきちんと見るという事ですから。この4年間、SpringboksもEngland程で
はないにせよ芳しい結果の出ない苦しい時期が続きました。でも、やはり、
いつも「ノート」に書いてきた通り、W杯でAll Blacksの壁になるのは
Springboks(かWallabies)だろうと思ってきました。そう、All Blacks
の優勝を阻むのは、という発想しかなかったけど、「Springboksが優勝す
るのを阻むとしたら」と想像してみて「‥All Blacksしかない」と気づき、
愕然というかがっくりです。All Blacksが抜けた今、Springboksが優勝に
王手をかけた状況で、説明のつかない空しさが私を襲う‥(笑&泣)。仏が
Englandに負けた時、EnglandがAll Blacksの仇をとってくれたと喜ぶ人が
多かった、とはNZ在住の人からの情報で、「はあ? それって何かズレてな
い?」と思いましたが、ふと我が身を顧みれば「SpringboksがEnglandを下
して優勝したら“All Blacksだったら勝てたのに〜”と悔しいから、いっそ
Englandが優勝して皆を仰天させてほしい」などと考えている“ズレまくり”
の己の姿が‥(爆)。Springboksは、先にWallabiesとAll Blacksの敗退と
いう貴重な教訓を得て慎重な試合運びができたように、運も味方につけてい
る気もします。いえ、Springboksが優勝したっていいんですけどね、Smit
さん好きだし‥。決勝トーナメントにきて、Smitさんがあくまで冷静にゲー
ムをコントロールしているのが印象的。あと、若手ではピーターセン君が殊
勲ものの働きをしてます。(更に若い)スタインや、ハバナのほうが目立ち
ますが、ピーターセンいいですよお、強靭なしなやかさが「Springbok」そ
のもの、といった感じ。マットフィールド、スカルクバーガー、スミス、
デュプレア、モンゴメリー‥他にもキラ星のごとく選手が揃っています。
これ迄の南アは粗野というか荒削りな部分が常に感じられ、その荒々しさ
がコワサでもあったので、先日「今大会は本来の激しさが不足」と書きまし
たが、どうやら、力が出ていない、のではなく、今迄の南アとは違う意識を
持って闘い進んで来ているみたい。“堅実な”南アなんて、らしくないんだ
けど、実はこれがきいてるんだ、という事がわかってきました。いつも堅実
なAll Blacksは堅実さを捨て去って荒々しくがむしゃらな試合をしなければ
W杯で勝てないけど、いつも荒々しいSpirngboksが荒っぽさを捨てて堅実に
来た日にゃあ‥勝っちゃいますよね、きっと。
<Argentina>
強いし上手いし、特にIreland戦はホント完璧な位の試合運びで感心しま
したが、敢えて厳しい意見を書くと、まだ“琴線に触れる”ようなラグビー
は見せてもらってない。自分たちの流れに乗ってる時には文句なくすごいけ
ど、負け試合の中でもグッと沸き立ってくるようなチームとしてのアイデン
テティというか、そういうものがまだ感じられなかった。だからまだまだこ
れからますます頑張ってほしいと思います。
07/10/17 佳
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