かよこのノート

 No.51 南半球テストマッチシーズン

 理解不能‥。All Blacks vs Ireland戦を放映せずに NZ Maorivs Tonga
戦を放映する日本のTV(Jスポ)って一体‥。いや、Maori/Tonga戦をやっ
てくれるのは大歓迎ですが‥。Pacific Nations Cup(以下PNC)の内、
JapanとNZ Maoriの試合だけを放映するって‥なんで?いやいや、Maoriを
やってくれる事自体はもちろん大歓迎、なんですが‥。しっかし、Tongaは?
Fijiは? Samoaは? Australia A は? ‥All Blacks戦を放映しない事
にも驚きましたが、百歩譲り日本が出場する大会のほうを優先して放映する
のだとしても、わざわざJapanとNZ Maoriの試合だけ、なんて限定せず、ど
うせだったら全部やってよ〜、お願いだから。
 気を取り直して、NZ Maori vs Tongaからいきましょう。
NZで行なわれたこの試合、一般の注目が同国で同日開催のAll Blacks vs
Ireland戦のほうに集まってしまい(ま、それが普通ですが)、観客席がや
や閑散としていたのは残念でしたが、期待にたがわぬ一戦でした。
“Jr.All Blacks”というカテゴリーよりも“Maori”のほうが素敵(単な
る趣味です)、と思い定めている私‥でもでも!やっぱりTonga!好きだなあ
(笑)。ラトゥさん(Nili Latu)は断然ラトゥさんだったし(何のこっち
ゃ)、は〜W杯のときめきが甦る〜(理性が飛んじゃってます)。
 それにしても、今更素朴すぎる疑問ですが、Tongaって、たかだか10万人
位の国だというのに、どうしてこんなに凄いのか。余程、体格的?人種的?
に、Rugbyに適している国民って事なのかなあ。私達が住んでいるこの安曇
野市程度の人口の中から、これだけのRugby選手がぞくぞく出て来るという
のは、ちょっと想像を超えています。もちろんSamoaやFijiや、それを言う
ならNZだって、“小国”には違いないけれど、わけてもTongaは小さい国で
すもんね。こういう国を応援せずしてどこを応援するんじゃ!‥と、第二週
のJapan vs TongaではもちろんTongaに声援を送りました(相変わらず非国
民)。なのに、ま、負けてしまった。去年やはりTongaがJapanに負けた時
には、「Tonga、調子悪かったからなあ」と自分なりに納得したものですが、
今年は、まあホラの出来が良くなかったという点はあるにせよ、2年連続の
敗戦とは。ショックのあまり「もしかしてTongaってJapanと相性が悪い(
苦手)??」などという、非論理的思考しかできない。W杯でTongaが見せた
ような、南アやEnglandとも対等に渡り合う力強さ、輝き、はまだまだ
Japanにはなく、普通に考えたら、Tongaが勝つはずなのに。キャプテンの
ラトゥさんも試合後可哀想なくらい意気消沈していたし(ああ、慰めてあげ
たい←)、エーン。
 でも、これでTongaが、“Japanに勝つ”“Japanに負けない”という事に
真剣に目覚めてくれれば、喜ばしい事かもしれない。多分、あのW杯で世界
から認められ賞賛され自信を得た事で、Tongaのターゲットは、Samoa,Fiji
はこれ迄通りとしても、より上位の国々になった面があるのでしょう。それ
がJapanに負けた事で、ただ力任せに上位国にぶつかっていくだけでなく、
自分達の弱点をしっかり分析してつけいられる隙のないチームを作るという
事からもう一度始めてくれれば、そうすれば、本当に堅固に強いチームになっ
てくれると思うから。今年のPNCではもう見られませんが(Jスポのアホ!‥っ
て、まだ言ってる)、Tonga頑張れ!(でも、FijiとかSamoaも好きなので
ちょっと困ってしまうわけですが。)
 さて、後先になりましたが、PNC第一週、放映があったもう一戦は、Japan
vs Australia A。
先日のClassic All Blacks戦で、粘るディフェンスで堂々の接戦を演じた
Japanでしたが、相手(CABs)側がJapanを研究していないせいではあるだ
ろうけど、と思った通り、そのCABs戦の映像を見たというAustralia Aは、
さすがに一枚、いやニ、三枚は役者が上、というところを見せつけました。
さほど点数が開かなかったのは、やっぱり、ディフェンスの崩れ方がこれま
でよりマシになったからだとは認めるけれど、逆に言うと、見た目の点差よ
りは、力の差はまだまだかなりあると感じました。それにしても、
Australia AやMaori(去年は“Jr.ABs”),Tonga,Fiji,Samoa といった、
実力の上回るチームと、毎年この大会で対戦できるなんて、Japanは幸せで
すよね。こういう幸せな機会を十二分に活かし、何年かたった時に、
Australia Aと、今回みたいな“余裕”を持たせない試合ができるようにな
る事、それがJapanの目標であるはずなんじゃないのかな。J.K.は PNC「3
勝」を掲げているらしいし、この試合の解説者も、Australia A戦は「勝つ」
試合をしなければ、みたいな事を言ってましたが、本気でAustralia Aに「
勝てる」と思っているのだとしたら、判断力を疑う。2003年のW杯時にも書
いた覚えがあるけれど、勝つくらいの気迫と覚悟で試合に臨む、のと、単に
「勝てる」「勝つぞ」と言って「勝ちにいく」つもりになっているのとは、
全く別物だと思うんですよね(尤も、2007年W杯では私の「勝てるかいな、
そんな甘いもんとちゃうで、“全敗”や」の予想を裏切り?、一つの引き分
けをおさめてプール4位になるという“結果”をあげましたし、今回もTonga
に勝ってしまいましたが)。
 それと、Japanの健闘に水をさすつもりではないのですが、CABs戦の時に
も書いたように、少なくとも今のJapanは、要所要所に“外人”選手がいる、
という事が非常に大きいと感じます。
 外人がいる事が悪いとは言わない。今年の三洋を、「トニー・ブラウンが
いたんだから、優勝したって当たり前で値打ちがない」なんて決して思わな
いし、マコーミック率いたJapanを、「あんな“外人”がキャプテンになる
ようではダメ」なんて誰も思わなかった。
 でも、今のJ.K.スタイルにはやや違和感があります。外人選手を駒のよう
に使っているだけという印象が拭いきれない。結果が出ればこれでオーライ、
なのかなあ、これでホントにJapanっていうチームが磨かれて、本当のラグ
ビー風土が日本に生まれるのかなあ。
 今のやり方だと、確かに「そこそこ」までは強くなるでしょうが、世界が
本気で賞賛するような素晴らしいチームになれるのかどうか。別に、世界に
賞賛してほしくて強くなるわけじゃない、って言われればそうかもしれない
けれど。これまでJapanは“取るに足らないほど弱い”国、と思われていて、
だから、Canadaに追いすがったり、Fijiと接戦になったり、Walesからトラ
イをあげたりしたら、それだけで「すごい」と言ってもらえたけれど、これ
から先Japanがどんどん“強く”なってきたら、最早「へ〜、日本もなかな
かやるじゃないか」なんて寛大な目で見てはもらえない、その時に、心から
「すごい!」と言わせるだけのものを持つ事ができるかどうか。なんて考え
ていくと、やはり、以前から言っている事ですが、日本人ならではの勝負が
できる部分を磨く。或は、◯◯ではかなわないし、△△でも負けるだろう、
でも□□でなら、という、これだけは世界一だという部分を作り上げる。そ
ういう闘い方をしていなかなくちゃいけないんじゃないかなあ、と改めて思
います。「そこそこ」に強くなる事が目標ではない、はず。ならば、思い切っ
た、徹底した事をやっていかなきゃ、Japanというチームの真のアイデンティ
ティっつーか、「誇り」が生まれない気がします。

 PNCはちょっと置いておいて、次は南半球テストマッチシリーズにいきまし
ょう。

Ireland戦は放映がなくて涙でしたが、続くEngland戦はやってくれたので、
All Blacksの試合を久しぶり(思えばあの悪夢の敗退以来)に見る事ができ
ました。
ミスが多い(両国共)、ラインアウトがお粗末(All Blacks)、ハーフが
ブレーキ(England)‥。いくらでも文句をつけられる粗い面もあったけれ
ど、‥ふーっ、やっぱりテストマッチだなあ、と、見ている者まである種の
“堪能”感が得られたゲームでした。
 ABsは、Tuitavakaのタックルが見事だったし、何かいい意味で近頃珍しく
地味なエイトという感じのKainoも頑張ってたし、W杯後に復帰した(「なん
でW杯にいてくれへんかったんや」となじる言葉の一つも投げたくなる)Brad
Thornはいつものように力強かったし、Smithの切れ味も健在! Sivivatu
も良かったけど、WTBの顔ぶれ(候補)としては、ChiefsのMasagaもぜひ期
待したい選手です。Sivivatuも、昔Chiefsで初めて見た時、その異次元の走
りに「??!!何、この人??!!」とぶっ飛んだものですが、昨シーズンに
Masagaを見た時にも同じ様な衝撃を受けました。他にも大勢候補はいます
が、とにかく、NZのWingerは、もう、アイランダー系の人しか考えられない
(笑)。
 Englandは、さっきも書いたようにハーフが‥、いや、専門家達がどう評
価している選手なのかは知りませんが、私が見ていて感じたのは、このレベ
ルにしてはあまりにもひどい(Englandの選手がこれを読む事はないと思う
ので、安心してバッサリ書いてしまいます)という事。SHの段階であれだけ
リズムが悪いと、そりゃあもう、勝てる試合も勝てなくなってしまうだろう
というくらい。‥で、じゃあ、ハーフがよけりゃあEnglandが勝てたのかい、
と聞かれれば、‥難しいでしょうが、もしかしたら勝てたかもしれません、
と言うのが本音の印象。実のところ試合はNZが圧倒していたので、多分これ
は少数意見だと思います。それでもあえて「もしかしたら勝てた」というの
は、少なくともEnglandのほうが断然上回っている点が確実に存在したから、
です。
 一列の威力!!強烈!!!‥「見たかっ?! 重戦車っていうのは、ああいうの
を言うんだ!!」と明治に向かって叫びたくなってしまった。もー、ハンパじゃ
ないです。すごいです。脱帽。敬礼。
さっき書いた、“◯◯ではかなわないし、△△でも負けるだろう、でも□□
でなら、という、これだけは世界一だという部分” ってやつですね、まさ
に。あれがある限り、Englandは、そしてEnglandのサポーターも、「誇り」
を失わないでいられると思う。
(Wilkinsonっていう人も、彼そのものがEnglandのアイデンティティと言っ
てもいいような特別の存在ではありますが、今回のテストには出場していな
いので。Wilko抜きのEnglandで、もし一歩間違ってあの一列を筆頭とする
FWの奮闘がなければ、総崩れ、になってたところでしょう。)
 同様に、南アvs Wales(43-17)に於ける「敗者の拠り所」、即ち、惨敗
の中でさえ失われない「誇り」であったのが、Shane Williams。アイラン
ダーじゃないのに(笑)キレてます、見事です。Walesの国宝、と呼びたい。
彼があれだけの活躍をするのだから、日本人が他の国に比べて小柄だなんて
いうのは言い訳にすぎない、小さくたって十分通用する選手はいるはず、と
思います。
 先日、南アとWalesのセカンド・テストも行なわれたのですが、こちらは
まだ見ていないので、又今度、PNCのこれからの試合の様子とあわせて書き
たいと思います。



                        
                            2008/6/16 佳
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