かよこのノート

 No.52 国歌(National Anthem)

 いわゆるラグビー強国の国歌national anthemは、テストマッチの度に
耳にするので、馴染みがあります。いいですよねえ、テストマッチ前の国
歌の演奏。他国の国歌なのに胸が高ぶったりして(自国の国歌ではそうい
う気持ちになれない‥)。昔々ラグビーを見始めた頃、まだ「5ケ国対抗」
だった時代に、Scotland代表やWales代表の“国歌”を聞く度に感動した
ものです。もう少し後の時代になると(1995年)、Ireland(アイルラン
ド共和国の選手達と英連邦に属する北アイルランドの選手達が共にラグビー
代表でプレーする)に、rugby anthem“Ireland’s Call”ができ、2003
年のW杯の時なんか、どっぷり浸ってました(泣ける歌詞です)。去年2007
年のW杯で大好きになったのはFijiの国歌、やはりしばらくはこればっか
歌ってました(←ハマりやすい性格)。という位に、結構どの国歌も好き
なんですが、おすすめ(っていうのも変だけど)を1つあげるとしたら、
South Africa国歌かなあ。3つの言葉で歌われ、言葉ごとに曲調が変わっ
て、でもそのそれぞれが一つになるunitedって感じがあって、すごく素敵
な国歌です。南アのテストマッチの度に一緒に口ずさんでいます。と言っ
ても、最初のアフリカーンズのところ(ここ大好き)は何となくなら歌え
るけど、2つ目(オランダ語?)がいまだにダメ、最後の英語は意味もわか
るから張り切って一生懸命歌ってます(笑、私は南ア国籍か、って)。
NZの国歌も必ず一緒に歌います(All Blacks vs Springboksの時にはもち
ろん両国国歌を歌うという節操の無さ!)。ところで、NZ国歌はMaori語
バージョンと英語バージョンがあり、テストマッチの時には、Maori語の1
番に続いて英語の1番の順に演奏されますが、NZの場合、観客の歌声を聞い
ていると、Maori語より英語のほうが断然大きいんですよね。Maori語バー
ジョンは一部の人達だけが歌っていて、英語になると全員が歌い出す、み
たいな感じ。その点、南アの国歌は誰もが3つの言語を全部ちゃんと歌って
る(多分)。‥お〜い、NZ、頑張れ‥って、別にNZ国籍でもない私がとや
かく言う事じゃないんですが。
 昨日のNZ vs Englandとの2nd Testで、国歌演奏の時に、Kahuiが、
Maori語バージョンを歌っていなかったので 「Kahui、お前もか」と見て
たら、英語バージョンになっても歌わない。もちろん、時々、歌わない選
手(Umagaなんかもそうだった)もいるんですけど、「ん?」と思いつつ
よく見てたら、Kahui、口を開いたら涙が溢れてきてしまいそうなのをぐっ
と噛み締めている、ようでした。‥何て初々しい(笑)。そっかー、初
キャップだったんだ。‥意外な気がする、いやいや、考えたらそーだ、
2006年のWaikatoで大ブレークしたのに次のシーズンにケガがあったんだ、
そーだそーだ、やっと掴んだAll Blacksのジャージなんだ‥などと考えて、
つい思い入れを抱きつつ、彼の“デビュー”戦を見る事になりました。
 しかし、「大丈夫かな、初キャップ」なんて心配(我が子を見守るおかん
の心境)は全く無用でした。これ以上ない位のデビュー。先制トライも挙げ
たし、何度もチャンスを作ったし、タックルは素晴らしかったし、思い切り
良く、そして誠実なプレー。とにかく、何か、体中からAll Blacksでプ
レーする喜び、みたいなのが溢れていて、動きも表情もとてもフレッシュ
で良かった(Chiefsでも又ぜひもう一度新鮮な気持ちで頼むよ〜って、こ
れは余計な事ですが)。私はAll Blacksの13、Smithが好きなんですけど、
昨日のKahuiを見たら、これはSmithとどちらを‥って、贅沢な悩みを抱えて
しまいますね、セレクターは。
 もう一人、デビュー戦の、いえ実際は例の放映されなかったIreland戦に
出たらしいので、正確には初キャップは獲得済みだった“新人”がいて、こ
れが私には全然見覚えのない人。Kahuiのように初々しい感じもないし、と
いって、いかにもな強面でもないし、どちらかというとぼーっとした風貌(
失礼)で、この人こそ「大丈夫かいな」(再び失礼)、というか、それ以前
に「‥誰、これ」(何度も失礼)などと思っていた(調べたところ
Otago/Highlandersの人だそうですが、考えたらSuper14のHighlandersの
試合、今季全く見てなかった)ら、これが結構、なかなか、かなり、いいん
ですよ〜。Adam Thomson。さんざん失礼な事言ってご免なさいね(笑)、
もうしっかり覚えたから許して。元気印のJerry Collinsが代表引退を表
明しちゃって、黒衣の6番を着るにふさわしい奴がどこにいるのかと思って
たけど、「いたじゃん」という感じでした。これで当分All Blacksを見る
楽しみ(ニューフェース達)が出来た‥いや、ベテランにも頑張ってもらわ
にゃあかんけど‥。これからTri Nationsなのにケガ人(McCawも)が出て
しまったものの、とりあえずAll Blacksは1stテストより良くなっていると
思いました。前回“世界一”と絶賛したEnglandの一列が今回は突破してく
る場面がなかったのは、それだけ、しっかりマークしてディフェンスでき
た、という事でしょう。そういう対応力はさすが。England。1stテストの
時ほどイライラしなかったけれど、やっぱ9番のリズムは良くない。これも
調べてみたら、かなり評価されている選手のようでしたが、うーん、運動
能力、ラン能力はあるに違いないけれど、パスがねえ。捌きの悪さがどう
しても気になってしまう。他には、1stテストの時に14番が素晴らしいス
ピードで湧かせてくれて「ングウェニア(何とか覚えた! U.S.A.のウィン
グの名前)みたい」と期待しましたが、2ndテストではミスも目立ち、まだ
まだ鍛え中、という感じでした。でも、6番も良かったし、FBに入ったテイ
トも奮闘していたし、今回出ていない選手にも見たいなあと思わせてくれる
人材がかなりいるので、Englandは、9番10番がしっかりしてくればグッと
強くなると思うんだけどな。
 ところで、いや〜、参りました。Shane Williams。前回既に『Walesの国
宝』と呼んでしまったのに、南アとの2ndテストでの活躍ぶりときたら‥
国宝以上! 何て呼べばいいのか、困ってしまう。FW贔屓(Ryan Jones
の“どこにでもいる”度はなかなかのモノです)で、WTBというポジション
にあまり興味がない(正確に言うとよく理解できていない)私ですが、個
性的な走りのできるWingerは、見ていて楽しい。強烈な個性の炸裂には、
敵味方(応援しているチームかそうでないか)なんて関係なく思わず拍手
喝采してしまいます。
 それにしても見応えのある試合でした。“屈強”という形容がピタリと当
てはまるSpringboksの選手達が結構へろへろになっている様子、なんての
も、あまり記憶にない光景で面白かった。Springboksは、単に去年のW杯で
優勝したからという理由だけでなく、世界ランキング一位の座にふさわしい
チームだと思いますが、Walesは堂々対抗していた、むしろ、惜しくも勝ち
を逸した、という感さえあり、互角の力を見せていました。やっぱり、“こ
こは負けないぞ”という自分達の持ち味があるというのは強いなあ。
 最後に、さっき終わったばかりのJapan vs Fiji。デラサウ(=殆ど神様!
と思ってます)とラウルニ(=師匠!という感じです)が出ないと知り、
がっくりしつつ、そんでもまあFijiが勝つでしょう、と思ってみていまし
たが、JapanもホントDFで粘れるようになったなあ。以前みたいに大崩れし
ない。ちゃんと試合になってて、それどころか、何かのハズミでどう転ぶか
わからない感さえ漂ってドキドキでした。が、地力の差でFijiが勝利しまし
た。Japanの健闘には拍手。でも、私が思うに、今年これだけの試合をした
事で、来年は更にハードルが高くなりそうな気がする。Tongaはリベンジを
期してくるはずだし、Fijiだって気を緩めずにかかってくるでしょう。だか
ら、本気の闘いはまだまだこれからだよ、Japan。 
 


                        
                           2008/06/22 佳
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