Last updated: 10/28/2011 13:49:00
No.55 Tri Nations その2
All Blacks対Wallabiesの第2ラウンド。“オール ブラックスの正念場”
と位置づけた一戦。
ピッチに走り出て来るRichie McCaw(ケガから復帰!)の表情がとても
ひき締まっていたので、久々に彼に引き込まれる。
National Anthemの時も、いつもは少し眩しげなまなざしなのが、今日は
険しく厳しい目。「そうそう。先週の、闘志とか自信が感じられなかった
顔と全然違う。その顔じゃなきゃ。」と、ちょっと手応えのようなものを
感じました。
そしてHAKA‥。前の試合のHAKAは全然気迫が伝わってこなかった、今日
はどうか??と思って注目してたら、わっ、Kapa o Pangoだ! ‥久しぶ
り‥。W杯ではこれをやる事もなく終わってしまったからなあ。「Home で
の」重要な一戦の前にしかやらないHAKA、という事に一応なってはいるけ
れど、やっぱりW杯ではやって欲しかったんですよねえ。トーナメントに
入って、「さ~あ、ここからはKapa o Pangoでしょ」と思ってたのに、Kamate‥でいきなりよもやの敗戦。別にKamateでもいいんだけど、気合い
さえ入ってればKamateでいいんだけど、でも、絶対負けられない、はずの
W杯トーナメントでは、Kapa o Pangoをやってほしかった、というか、あ
れをやらないではおられない、というABsの“気持ち”を見たかった‥‥‥。
ずっと見てなかったので、正直言うとすっかり頭から遠ざかってしまっ
ていて、「今日はKapa o Pangoかも」というような予測すらしていなかっ
た。けど、始まった瞬間、うわっ、と思いました。これをやらないではおら
れない。今日のABsはまさにそうだったよね。
先制したのはWallabies。しかしすぐに同点に追いついたあとは、もう最
後迄ほぼ完全にABsのゲーム、でした。
ところで、先週の大敗(連敗)で、以前から度々起こっていたヘンリー
監督の進退問題が一挙沸騰という状態になっており、Wallabies率いるNZ
人ディーンズ(元Crusaders監督)との“采配勝負”が話題の的だったわ
けですが、今日の試合は、ヘンリーさんお見事、というゲームでした。
まず試合前のメンバー発表で「おおっ」と思ったのが、Kahuiを14番に
入れたこと。解説(例によって副音声)でも“surprise selection”と
言ってました。Nonuがはずせないとなると13はSmithかKahuiかの「どちら
か」でしかあり得ないわけで、ああもったいない、と嘆く私は密かに「こ
の二人に12,13を組ませてNonuはWingerに‥」などと考えていましたが、
12Nonu,13Smith,14Kahui‥そうきたか~、とびっくりしました。ヘンリー
あなどるなかれ(笑)。
そして、戦術面での一番の転換というか収穫は何と言ってもラインアウ
ト。前の試合まで、とにかく「ABs最大の弱点」だったのに、今日は、もし
かしたら「最大の強味」かも、という位の出来。つい1週間前の脆さが嘘の
よう。マイボールも安定してきたし、相手ボールを果敢に競るし(しかも
奪っちゃうし)。‥積極的にいきさえすれば上手くいくじゃん。って、本
来上手い人達なんだから当たり前と言えば当たり前なんだけれど、これ迄
のABsときたら、受けに回っていて、どうしてこんなに大人しいのかと不思
議なくらい覇気がなかったんですが、ミスを恐れず前へ前へ出たら「ほ
らー、こんなに強い」と、嬉しくなるくらい。そう、久々に、嬉しくて
心躍る試合、でした。
今日は、あえて、誰それが良かった、なんて書かない。皆素晴らしかった。
ミスがあっても、それを帳消しにするような見事なプレーやファイトがあっ
たし。試合開始後のほんの数分を除いてずっとリードをしていた“勝ちゲー
ム”だったので、私がいつも言うところの“死にもの狂いで逆境を覆す力
強さ”というのとは少し違うかもしれないけど、でも、「絶対負けられな
い」一戦で、自分達から仕掛ける「挑戦者」の姿勢を見せてくれた。
最後に。今日の勝利の価値は、Wallabiesが決して悪くなかったって事
にあります。悪いどころか普通だったら「これ(Wallabies)に勝てるチー
ムってあるの?」と思ってしまうに違いないくらい凄かった。その
Wallabiesに39-10。前の試合のスコアを“大敗”と書いたけれど、今日の
は“完敗”、つまりABsの“完勝”と言えるかもしれない。尤も、
Wallabiesも無論このまま引き下がれないだろうし、SpringboksもHome
gameがまだこれから。今年のTri Nationsは後半戦もますます面白く、
W杯並(W杯でBoks以外の2チームはトーナメントに入った途端敗退し、い
わば“不完全燃焼”だったから、まさにW杯を戦い直しているようなもの
かもしれない)の白熱したゲームが見られそうです。
2008/08/2 佳
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