No.59 雑感「指導者」と「チーム」について

 菅平、高校夏合宿。
野上先生が、昼の休憩時、Hコーチに話しておられました。
「午後の試合のメンバーは、今朝のランパスで走ってた子を使わなあかん、
と思う。そやなかったら今朝(ランパスをやった事)の意味がない。」
「(だから、俺がメンバーを選ぶなら)今日の時点やったら、◯◯やなく
て、××や。」
「(ランパスで走ってなかった)◯◯を出したら、(練習で頑張ろうがそう
でなかろうが)“いつも一緒やん”“変わらんやん”って事になってまうや
ろ。」
 そばにいた私は、
(いやー、ご尤も。確かにそうですよねえ)、と(例によって心の中で)頷
いていました。
そしたら、野上先生、
「って、思うんやけどな。ま、エエわ。」
あっけらかんと言い残し、さっさと立ち去ってしまわれた。
(‥へっ? 「ま、エエわ」って‥。エエんですか、ホンマに?) 
肩すかしを食らったような、でも、何と言うか、
(ふーん、なるほど。監督の決定には口は出さん、ってか。)
ちょっと愉快な気がしました。
 で、結局その日の試合のメンバーは“いつも通り”◯◯君。
だったのですが、それが結構(予想よりも)走る、んです。ほおー、と、
益々興味深く感じた。
 野上部長と福谷監督‥、昨年までの監督と、そのそばで10年以
上コーチをされてきた新監督との、べったりではない信頼関係。そして、監
督と生徒‥、メンバーを選ぶ側と選ばれたメンバーとの、テレパシーみたい
な不思議な関係。そうしたものを垣間見たような思いでした。
 こういう事って、愉快、興味深い、なんて面白がってちゃ申し訳なく、難
しいなぁ大変だなぁ深いなぁと言うべきなのかもしれない。でも正直“面白
い”(すみません)。
 色んな場所で様々な機会に目にするチームの中には、闇雲に怒鳴り散らし
ているだけじゃないのかというコーチが時折いて、「このチームの指導者と
部員達との関係ってどうなってるんだろう」と(行き当たりばったりに怒
鳴っているようだけど実は、みたいな、ちょっと見ではわからない面が隠れ
ているやもしれず、余計なお世話、なんでしょうが)心配してしまう事があ
る。
 監督やコーチがどういう位置にいてどういう時にどういう声をかけるのか
どういう怒り方をするのか、といった、ラグビーのプレーには直接関係ない
事も、<チーム>に注目して見ていると―又言っちゃいますが―とても面白
い。
 常翔学園の場合は、指導者の意識というか目線がぶれないのがまず好まし
く頼もしい。最優先なのは、部員が如何に成長してゆけるか、それをどうサ
ポートできるかって事(‥なんだろうというのが伝わってくる)。だから子
供達を安心して任せられる(保護者か、私は)。◯◯君も、そして××君も、
大丈夫、きっと頑張れる、と思える。
 ひいき目というわけじゃなくて(多分←笑)、例えばろくに知らない学校
であれどんな学校であれ、黙ってしばらくじっと見ていると<チーム>の姿
が少しだけだけれど見えてくる。その時に、あ、いいチームだな、と感じる
かどうか(但、この、感じ方、つまり“いいチーム”だと思うか思わないか、
は、人によって違うのかもしれないですが)、なんですよね。

 そんな事を考えていたら、今度は、お盆開けの大学夏合宿で、C大セレク
ターのHさん、支部会長のTさん、一家揃ってC大志望だったのに明治に進ん
だ某君のご両親、の4名のかたがたが我が家に泊まられ(て菅平通い)、(
何故某君がC大に進めなかったのかも含め)仰天の話を色々お聞きし、再び
『指導者』について考え(させられ)る事になった。のですが、ここで具体
的な内容を書くのは憚られるのでやめておきます。
 代わりに、というのでもないのですが、明治の事を少し。

 今年の6月、オープン戦シーズン。
私みたいな半端な明治びいきなんかじゃない、すごくしっかり明治を見てい
た女性が、毎試合(毎日の練習まで)事細かくそして熱く綴っていたブログ
を、突然休止してしまった。(ブログを見ていただけで、知り合いではない
ので、休止の真相はわかりませんが)筆を折る前の彼女が何度か「こんな緩
い雰囲気でいいのか?」みたいな疑問を書いていたので、もしかして、筋金
入りのサポーターさえ匙を投げてしまうほど、明治は、ゆるゆる、なのか?
と危惧を抱いた。
 8月、夏合宿スタート。
練習試合の結果がHPに載る。関東学院に完封負け。‥こりゃあかんわ。私も
匙投げちゃいそう。
 そして先週末、(半ばおそるおそる)菅平をのぞいてみると。
某君のご両親と共に明治のグラウンドへ向かった(ちなみに、ちゃんとC大
も見に行きました←後述)のに、試合してない。練習もしてない。何をして
たかというとチビッコ達(上田&長野ラグビースクール)と遊んでた。某ご
夫妻、脱力。とりあえず、長野RSのKさんをつかまえて「来年は絶対安曇野
スクールも誘って下さいよっ!」とアピールしておきましたので、安曇野の
チビッコ達、来夏は明治と遊ぼうねっ‥‥‥って、いや、そーいう事じゃな
くって(笑)‥‥‥試合も大して組まず、練習もそれ程ハードにせず(前日
も練習なしだったそう)、某夫妻なんか「遊んどる場合か?!」とこぼして
おられましたが、私も、つい「これでいいのか」という気になってしまう。
「大丈夫か」明治。
 次の日。
この日はようやく試合があったのですが、試合前も、試合中も、試合後も、
藤田さんはというと、相変わらず、のんびり、といった感じで構えてる。
うーん、この親(指導者)にしてこの子(部員)あり? これでいいの
か?? 大丈夫か???
 けれど、何故か唐突に思い出した、
「北島忠さんだってそう言えば全然ピリピリしてなかった」。まあ、私が存
じ上げているのは既に晩年、ご隠居様的な存在でしたから、ピリピリもガツ
ガツもしてるわけなくて、ひょっとするとお若い時には“鬼監督”だったか
もしれないわけだけれど、真偽はさておき、とにかく“北島のおやじさん”
は、「勝て」じゃなくて、ただ「前へ」としか言わない(ことになってい
る←笑)。
今頃何を、と言われそうだけど、「藤田さんも“明治のおやじさん”ってこ
とか」とふと感じた。 
 「もっと□□□□□にならなきゃ。」
 「こんなことじゃダメだ、■■■■■でやらなきゃ。」
 「何でそんな事がわからないんだろ」
これ迄、この『ノート』で、さんざん偉そうに書いてきました。
強くなってほしい、から、もっとこうなってほしい、ああなってほしい、と
願う。願って、がっかりして、毎年(ちっとも変わらんなー、と)あきれる。
時代に乗り遅れたかのようにノッタリノッタリ。ピリピリせずガツガツもせ
ず。‥だから燃え尽き症候群になる事もなく、卒業後もラグビーを続ける部
員が多い(のかも)。‥大学で“完成”しちゃわないで、まだこれから、と
いう可能性を残していられる(のかも)。明治の周りのゆったりした(緩
い?)空気を感じながら、「それが明治なのかな」と漠然と思ったのです。
 それが明治、なのだとして、私には今のところそれが「いい」のかどうか
わからない。ただ、「自分以外のものにならなくてもいい」、のは確か。
そう、みんながみんな清宮になる必要なんかぜっんぜんないんだし、ね。考
えたら、明治がどっかのWみたく「王者の誇り」なーんて言い出したら気持
ち悪い。貧血おこしそう。やっぱ、明治は明治でいいや(笑)。
 と、あれこれ思うけれど、ホントのところ、今のままで「いい」のかどう
かはわからない。自信はない。どこか緩すぎるのではという気持ちは払拭で
きない‥。でも、部員達の表情は明るい。だから、ま、エエわ。とりあえず
そう思うことにしました。これ迄のように「何チンタラしてんねん、アホや
なあ」とやきもきしたり心配したり(えっ? やきもきじゃなくて単にけな
しているようにしか聞こえない? いやー、それは関西弁のせいで、これで
も心配しているわけです)せずに、ただ、黙ってじっと見てみよう。
 ところで、HさんとTさんが、某夫妻に「(かよこさんを)明治に取り込ま
ないで下さいよ」と防衛線を張って下さっていましたが、取り込まれるも何
もC大の前からそもそも明治びいきなのでご勘弁を。正直、C大はセレクショ
ン関係のトラブルが続いて嫌気がさし熱意が失せています。部員達に非があ
る事ではないから、とは思っているんですが‥。そんな中、はりきって応援
しよう!という気持ちにさせてくれるのがFLのK郎君。イイですよ〜、残
念ながら今回はAチームの試合が中止になりプレーが見られなかったけど、
どんな試合(負け試合)でも常に頑張ってる。明治の某君(やはりFL。どの
チームを見る時でもついFLに注目するのですが、去年花園で光っていたのが
彼。獲物を狙うハンターのような、素早く鋭い反応が印象的だった。こんな
風にご両親とご縁ができるとは。お母様から赤ちゃん時代のエピソードまで
うかがい、最早他人のような気がしないから、「長野のおばちゃん」とでも
呼んでもらおう←笑)の活躍も楽しみだし、
さあ、秋のシーズン開幕。
黙ってしばらくじっと見る、の「しばらく」が、いつまで続くか?!最後ま
で口を挟まないで見ていられるようだといいんだけど。



                        
                           2008/08/30 佳
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