No.67 福岡決勝(と花園組み合わせ)

 一度目の観戦は、大阪、奈良、京都の次。見終わった後、冷静ではいられ
なかった。落ち着いてじっくり見よう、と思い、半月おいて再び。
福岡決勝。東福岡対筑紫。
 試合前、両チームキャプテンがハーフウェイで会する様子に、「原田君(
筑紫の主将)って、こんなに小さいんだ」と改めて驚く。尤も、向かい合っ
てる猿楽君(言わずと知れた東福岡主将)がやたらデカイ人なので余計にそ
う感じるのかもしれない。実際の身長はよくわからない。
 試合中の原田君は、とても大きく見える。
3ケ月程前。菅平での各校との対戦成績からかなり良い仕上がりのようだと
思っていたら、丁度、西村監督さんと短い言葉を交わす機会があり、好調そ
うで楽しみですね、と言ったところ、「それが‥」と心配されていたのが原
田君のケガだった。「どこまで間に合ってくれるか‥」。
 決勝のTV放映中、彼の膝については“8割くらい(の回復)”という表現
がされていた。プレースキッカーも、本来は彼だそうだけれど別の選手がつ
とめていた。でも、プレーを見ている限り、「完全じゃない」とは信じられ
ない。筑紫の唯一のトライは、彼が2度攻撃にからんでいて2度目の時に相手
をきれいに抜きさりお手本のようなラストパスを出して生まれたもの。ボー
ルを持ったら必ずゲイン。冷静な判断。自陣前に攻め込まれてのクリヤー
キックの安心感。‥いい選手だ。
 でも原田君に限らない。この試合の筑紫は、ごく僅かな点をのぞき文句の
つけようのない内容だったと思う。
 誉めてあげたい気持ちでいっぱいなのだけれど、この際まず(数少ない)
文句から。一つは、せっかくFWが前に出た後の、ハーフからBKへの球出し。
なんで?と思うくらい、後ろに下げすぎ。当然ELVは心得ているにもかかわ
らず、「とりあえず22メートルラインの中に戻すのだ」と、パスを出すほう
も受けるほうももしや習慣でやってしまっているのでは、と首をかしげた。
その事が致命傷になっていたわけではないとは言え、終盤、東福岡にリード
されてからは、そんなに後ろにボールを戻すことなくどんどんゲインを切る
攻撃ができていたので、「ほーら、そーでしょー。積極的に前へ前へでいい
んだよー。わざわざ後ろへ下げる必要なんてなかったじゃん」。‥来年は修
正するんだぞ(笑)。もう一つは、自分(味方)がキックを蹴った時の対処。
ちゃんとチェイスはできてる。だけど、あえて相手にとらせているはずの
キックなのに、それをつかまえられてない。「そこでつぶせないようなら、
相手にとらせるキックは蹴っちゃいかんだろー。他のチームならともかく“
相手”はヒガシだぞー」。相手はヒガシ、というところで、一番怖いのは、
人数が少なくてスペースがある場面での1対1、のはず。それを考えたら、相
手にキックをとらせてカウンターで走られるのは、最も警戒すべきシチュ
エーションでは。ここも“来年への修正点”。
 しかし、近場でのDFはほぼ文句のつけようなし。前半終了間際、自陣前の、
1分以上にわたるヒガシの攻撃を耐えて押し返していたDFに、昨年の大阪決
勝ケイコー対コーダイの試合終了間際の攻防を思い出した。あの時、コーダ
イは耐え忍び、今回筑紫は遂にはゴールラインを割られてしまったのだけれ
ど、結末はともかくあれだけのDFができるってスゴイ。個人的には、ここで
最終的にトライをとられたという事よりも、その前、28分くらいの筑紫のマ
イボールスクラムでのペナルティ、これが気にかかる。一体何だったのか理
解できなかったので知りたい。
 後半。
福岡決勝の放映はダイジェスト版(全国から注目の集まるゲームなのに)の
ため、いきなり4分50秒くらいから始まる。8分にヒガシが今度はBKの連続攻
撃でトライをとり逆転。この一連の攻めには「ノッコン?」「スローフォ
ワード?」と見えなくもないプレーが‥と、つい筑紫サイドになってしまっ
ている目線。
 ゴールも決まりヒガシが2点リードしたところで、次はなんと21分に飛ん
でしまう(おいおい、福岡テレビーっ)。ここからは、先程書いたように、
筑紫の“後ろにボールを戻すことなくどんどんゲインを切ってくる攻撃”が
見られる。ラインアウトを起点にBKが展開。パスとランに迷いがなく、無駄
がなく、力強い。と言っても相手はヒガシ、力では負けていない。何度も
ターンオーバーされる。ターンオーバーの後のヒガシは脅威。これは高校ラ
グビー界の常識。しかし筑紫はそこで崩れず、更にターンオーバー、という
シーンも。ところで、どこかでぜひ言及しておきたいと思いながらここまで
来てしまったけど、筑紫の3列。いい働きだった。特に6番。ヒョロッとして
て重心が高いような(足が長いのかなあ)感じで一見あまり凄い選手には見
えないのだが(失礼)、反応良し、タックル良し、の花丸。いや、くどいけ
ど、原田君だけ、でも、6番(丸山君)だけ、でもなく、ホント皆良かった
よ。25分。筑紫がペナルティを得てショットを選択(点差と時間帯からこの
選択は間違いではない)。そして、直接的には、「これが入っていれば」
勝った、即ち「これが入らなかったから」負けた、という事になっているの
だけれど、実は「これが入らなかった」その後の攻防こそ見るべきものだっ
た気がする。
 ヒガシが負ける可能性は最後まであった。終盤、確実に時間をかけてきた
ヒガシなのに、もう恐らく時間がないだろうというところになって急に展開
プレー。なんでここで回すの、と、一瞬筑紫目線を忘れてのけぞってしまっ
た。まだまだ筑紫にチャンスあり。
 しかしチャンスの神様は突如立ち去ってしまう。最後(ここ、残念な事に
画面が密集のアップになりすぎていて、何がどうなったのか正確には判断で
きない)筑紫目線にはどうしても東福岡のオフサイドに見えるシーンがある
のに笛はなく、逆に、筑紫のラストプレーの攻撃で、「早すぎる」(と思え
る)ノットリリースの笛。ノーサイド。
 以上、筑紫目線を自覚しつつできるだけ平静にじっくり見ての観戦記。と
は言ってもあくまで個人の感想。というのも、西日本新聞の記事(時間の経
過を追ってスコアブック的に見るなんて事をしたためしがないから、もしか
して福岡県協会のHPとかにスコアブックがアップされてやしないか‥関東協
会のリーグ戦なんかだとマネージャー手書きそのままで掲載されてたりす
る‥、と探してみたけど無くて、かわりにひっかかった)によると、この試
合、「2点差以上の力の差を感じさせた」(東福岡は)「リードを許しなが
らもどこか余裕があった」「実は重圧は筑紫にかかっていた。東福岡の選手
は1対1では決して倒れず、2人がかりや3人がかりで止めなければならな
い。消耗は激しかった。前半終了間際の30分。東福岡FWが敵陣ゴール前
でボディーブローを打つようにサイドアタックを重ねてねじ込んだ追撃トラ
イは、自然の成り行きだった。これで流れが変わり、後半8分、ナンバー8
山本の同点トライ、その後のゴールであっさりと逆転した」というものだっ
たそうなので(笑)。
 もちろん私も東福岡が弱いなんて思っていない。むしろ、西日本新聞じゃ
ないけど、点差以上に地力では東福岡がまさっているのかもしれないとも思
う。だけど、少なくともこの一戦に関してはそんな“余裕”があったとは見
えない。‥のだが、事実、試合後の東福岡は、力で負けなかった事、を喜ん
だらしい。*「1対1で勝つことにチームとしてこだわり続けてきた」*「
谷崎重幸監督も「技のラグビーは研究されるが、力の差は対応できない」と
目を細めた」(*いずれも西日本新聞より)


 ‥力で勝つ、というのは、ある意味正しいというか鉄則かもしれない。だ
けど、「技のラグビーは研究されるが、力の差は対応できない」って、高校
ラグビーの監督がそりゃないでしょ。
                            
あと、試合後の、監督、主将、チームの面々の笑顔。何だか違和感があった。
こういう試合の後であんな風に笑えるもんかなあ、と。まあ、接戦を制して
花園出場を決めたわけだから嬉しいのは当然だし、あの明るさがヒガシだと
言えばそうなのかもしれないけど、例えば、神奈川決勝、千葉決勝なんかだ
と、どっちが勝ったのかわからないくらい勝ったほうのチームがわあわあ泣
いてた。ああいうのを見た後で東福岡を見たら、ちょっとね(ご免なさい、
Oママ。ヒガシの悪口言うつもりは無かったんだけど、東福岡関係者でも何
でもない私としては、“昨年度全国制覇の王者”よりも挑戦者のほうに気持
ちが向いちゃうんです、怒らないで下さいね)。

 話かわって、先日、ヒロちゃんに「30日に応援に行くから、1回戦は勝っ
てよ」と言ったら、「ハイ! 頑張ります!」、じゃなくて、「くじ運次第
です!」と返ってきたので転けたが、今日の抽選会でヒロキ主将が見事ひき
あてたのは京都成章。さっすがー、のくじ運だね、ヒロちゃん。
我家が収集している各地の決勝がこんなところでお役にたつとは(早速N
コーチが「京都成章のビデオ、貸して下さい」と借りに来られました←素早
い!)。今年の成章に“予感めいたものを感じる”と発言していた私(No.
66)、予感って、もしかしてこれだった? という事にしておこう (笑)。
今日はここまで。


                        
                           2008/12/06 佳
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