かよこのノート

 No.94 6月のゲーム(観戦編その5)U20JWC Semi Final

 U20JWC決勝トーナメント。

 Semi Final―1 NZ vs Australia
 今大会初めて目にするYoung Wallabies(Baby Blacks、Baby Boksときたら
Baby Wallabiesだと思うのですが、副音声解説ではBabyじゃなくてYoungと呼
んでいたので、それに倣います)、国歌斉唱に整列した姿はジャージがはちき
れんばかり(胸が厚い!)で、NZの選手達より一回り大きく感じた。
Young Wallabiesには覚えのある選手はおらず(Super 14に出てる選手もいる
のだろうけれど、殆ど見ていないので(^_^;) )、予備知識ゼロ状態。副音声
解説によると#9が注目というか有名選手らしいが、ゲームが始まってすぐ、
これは私にはダメだ(好きじゃない)、と思ってしまった。運動能力は凄いの
でしょうが、捌きが軽いというか無造作というか、ポヨヨーンというパス。気
になってしょうがない(悪い意味で)。大体、一旦ボールを引いて投げるなん
て、その時点でハーフとして失格じゃ(出直して来い)と言いたくなりませ
ん?(と思わず同意を求めてしまいましたが、別にどんな投げ方だっていいよ
というのが一般的らしく、実は結構そういうハーフがいて、その度に気になり
ます)。Young Wallabiesでは特に目をひかれた個人はいませんでした。その
かわり全体にパワフルだった。
 NZ(Baby Blacks)は、試合前のHAKAが気合い十分だった割には何だかパッ
としない立ち上がり‥と思っていたけれど、立ち上がり、と言える時間を過ぎ
ても、一向にセットプレーが良くならない(どころかますます迷走)。キック
もIreland戦に続き今一つだし。うーん、こんなに詰めが甘いとパワーにやら
れちゃうぞー、と何だか悔しい気分で見てました。というのも、この時点で
Young Wallabiesは所謂“力のラグビー”だな(と片付けるのは語弊もあるで
しょうが)という気がしていたから。
“力のラグビー”に屈することなく、“技のラグビー”そして“ハートとプラ
イドのラグビー”でBaby Blacksが何とか勝ってほしい、そう願いながら後半
を見始めました(前半終了時7対7)。
 後半、先に得点したのはYoung Wallabies。しかも、Baby Blacksの何重にも
続いたミス(失態)によるものだったので、流れがこのまま一気に相手に行っ
てしまいそうな嫌な予感(7対14)。
しかし、Baby Blacks、ここからが良かった。ずるずると沈むことなくファイ
トした。チームメイトを鼓舞するようなプレーが続く。そして、ナイスチャー
ジ(これも正に、身を挺しての、チームを鼓舞するプレーですよね)からのト
ライで同点(14対14)、更に、間髪おかずのトライ(21対14)で反撃の気を削
いだ。もちろんYoung Wallabiesが実際に反撃をやめたわけでもないし、まだ1
トライ差に過ぎず最終的な勝敗の予測などなし得なかったのですが、この立て
続けのトライと、その後の、“守りに入らない攻めの姿勢”を見たら、絶対
Baby Blacksが勝たないわけはない、と胸を張りたくなりました(←心情だけ
NZ人)。
 チーム全体がタフで強靭、との印象のYoung Wallabiesに対して、Baby
Blacksは、やはり個々のスキルと、ラグビーと共に育ったならではの引き出し
の多さが目についた。魅力ある選手が幾人もいて全員は書き切れないから一人
にしよう、(日本では)マイナーな選手を取り上げようかとも思ったのです
が、どうしたってこの日のZac Guildfordは落とせないわ。他の選手はイイと
ころと同時にミスも出ていたけれど(それが当たり前)、Guildford、完璧で
した。一つ目のトライもコース取りの良さが光ったけれど、圧巻は二つ目(上
に書いた、反撃の気を削ぐ続けざまのトライ)。#10のキックをスッとキャッ
チした瞬間(まだ40m位はあったけど)こりゃトライだねと危なげなく思えた
ラン(ただ速いんじゃなくて、強い姿勢でバランスの良い、凄くイイ走り)。
これ、正面からのアングルでの映像を見たら、むしろボールをキャッチする前
のランニングに感心しました。先日「あれだけはわからない」なんて言ってた
けど、やはり「あれだけ」ではなく「これも」わかりません、どうやったらあ
んな風に走れるんだろ。もちろん、トライだけでなく、ハイボールキャッチと
いい、サポートプレー、ディフェンス、キックといい、大活躍でした。
 試合終了後、副音声解説が「多くの人の予想とは違ったかもしれません、事
前の練習試合ではYoung Wallabiesに敗れていましたからね」と言っているの
を聞き、ああ、やはりそうだったんだ、と思いました。
体格的に、恐らくパワーでも劣るチームが、それでも、前回大会チャンピオン
の、そして(All)Blacksの誇りでもって、果敢に立ち向かい勝利を手にし
た。拍手。やったね、Baby Blacks!

 Semi Final―2 South Africa vs England
当日の視聴を断念し、後回しにしてたら、結果を目にしてしまいました(せっ
かく新聞は読まないでいたのに、ABsのHPを開いたら『U20チームが決勝進出、
Englandと対戦』という見出しが‥)。
えっ!? South Africaが負けたの!? あの(フツーの)Englandが、あの(断然
強い!)Baby Boksに勝った!? どうやって、どんな風に? 不思議!
 が、見たら納得(笑)。‥そーか、うっかりしてたけど、Englandなんだ、
U20と言ってもやっぱりEnglandだ、一見華やかでも綺麗でも特別に速いわけで
も何でもないのにしぶとくて強いあのEnglandだよ‥と。そう、だから、(予
選プールのように)地力に差がある時のEnglandの試合が面白いわけはない
(笑)のに、それを見て「フツー」と思ってしまったのは迂闊でした、厳しい
試合でこそ本領発揮するのが彼らなんだ。そんなとこまで(というより、考え
たら必然だけど)正代表と似るものなんだなあ。
 ふと気がつくと、ラグビーのスタイルだけでなく、選手の体型やタイプまで
シニアチームと瓜二つだったりして、結構楽しめます。雄牛のようで機動力抜
群のPRや走る走る激しいLO‥。#13なんか、身のこなしから顔までMathew
Taitそっくり。ポジションと人材との関係もあるとは思うけど、彼と#9あた
りは、すぐにでも正代表から声がかかってもおかしくなさそう。
 で、Baby Boksはというと、やはり強いのです。この試合、イエローカード
とレッドまで出て、大事な時間帯の内の25分間程を14人で戦ってたわけで、そ
れでいて残り7分位まではまだ勝機のある展開でしたから(#8が豪のRocky
Elsomばりの突破力を見せていたのですが、終盤引っ込んじゃったので―何で
だろ、ケガだったのかな―ちょっと残念でした)。
 だけど結果を知って見たせいかもしれませんが、内容は最初から最後まで―
スコア上では、一時(前半終了時)はBaby Boksが僅かながらリードしていた
のですが―完全にEnglandのゲームだったと思う。
Baby Boksが“力のラグビー”或いは飛び道具頼り(=DG狙いがやたら多い。
DGってそりゃ大きな武器なんだけど、私の感覚が古いのか、ここぞという時に
使うのはイイけど、あまりに多用されると興ざめてしまう)のラグビーに終始
している一方で、Englandは首尾一貫してEnglandだった、つまり、全ての局面
で確実に(差し障りやリスク無くという意味ではなくて、責任感を持って、と
いう感じ)プレーする。ボールが相手側にあればそれを奪い取るために必死で
ぶつかる。自分達がボールを持っているならば絶対につなごう活かそうとす
る。一々身体を張る。当然激しい当たりが出るから、一見Englandのラグビー
も又“力のラグビー”に見えてしまうかもしれない。だけど、似て非なるもの
です。力任せじゃない。規律というか精神的成熟を感じさせるラグビー。
Baby Boksが“恐るべき子供”だとしたら、Englandは“威風堂々”たる大人
(試合後のキャプテンのコメント←例によって何を言ってるんだかちんぷんか
んぷんだけど(;_;) を見ても、立派なものです)。
 以前、「ラグビーやってる時くらい子供でいい」「大人より、子供のほうが
強い」と書きました。あの時は、土佐君のやせ我慢につい「そんな無理して大
人でいようとしなくていい」と言いたくなったのだけれど、本来は、大人とし
て立派にラグビーが出来たら、言うまでもなく、それが一番良い。
そして、めちゃくちゃ凄い子供にフツーの大人は勝てない、のだけれど、め
ちゃくちゃ凄い子供にだって勝てる凄い大人もいるわけだ(←その凄い大人を
「フツー」なんて呼んでたのはどこの誰?)、と、思い知りました。御見事、
England!
 ところで、先程“完全にEnglandのゲームだった”、と評しましたが、それ
でも猶勝つチャンスも見えた事に南アのコワさを感じます。Baby Boksは成熟
していない子供であって、まだまだ天井知らず。うーん、やはり正代表チーム
のイメージとだぶる‥。
 結局、その国がどういうラグビーを目指しているのか、どういうラグビーを
しようとしているのか、であって、良いとか悪いとかじゃなく、自分達に一番
合ったラグビーをしている、ということなんだと思う。どこかの国の場合に
は、それが見えてこないんですけどね。

 さて、「決勝トーナメントをまとめて‥」と予告していましたが、今週末は
お客さんも来るし安曇野チャレンジカップもあるし(雨降りませんように‥)
で、ABsの第二テスト/待ちに待ったLions/U20の最終日(←もう、PNCは殆ど
諦めてる)‥を見たり書いたりできるのが先になりそうなので、とりあえずこ
こ迄で。


                        
                           2009/06/19 佳
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