No.99
Lions,Lions,Lions!!!
“6月のゲーム=楽しみがいっぱい”の中でも特に待ちに待っていたのが
Lionsだったのに、色々あって見る事も書く事も滞ってしまっていました。
せっかくの最終戦も生では見られず、後から録画で観戦(結果を見ないよう
にするため、しばらくHPが開けなかった)。凄いゲームだったので、しばら
く心の中で反芻(←牛?)していましたが、やはり書く事はままならず日が
たってしまいました。機を逸したように思い、見送るつもりだったのですが、
考えたら次にLionsの事を書けるのは(次にLionsに会えるのは)4年先になっ
てしまうので、とりあえず今回のLionsについて、書いておきます。
British & Irish Lionsを「ちゃんと見た」のって、今回が初めてだった
かも。2001年(豪遠征)以前は興味がなかった(‥)し、前回2005年(NZ遠
征)は大いに関心を持って見たつもりだったけれど今思うと殆どABs側からの
視点だった。2009年(南ア遠征)。私がSpringboks目線になるはずはなく、
従ってLionsに注目して、というより、完全にLions寄り(←今回はずばり“
北半球モード”)でテストマッチ3試合を観戦しました。
第一戦。Springboksが先に自分達のペースをつかみ得点を重ね、余裕ある
リードを広げたので、終盤Lionsの猛追があったとは言え、Springboksが負
ける感じは全くしなくてLionsは食らいつくのが精一杯に見えた。ただ、
Springboksの勝ちゲームのパターンの中で、結果的にこれだけ競った形(
26対21)に持って来れたLionsの粘りに「さすが」の感も覚え、セカンドテ
ストでの巻き返しが楽しみに思えた。
第二戦。その期待通り、Lionsが終始優位にたつ。それなのに、フルタイム
まであと数秒、ペナルティで逆転負け(No.98で少し触れています)。
第三戦。もはや、たとえこれに勝っても、テストマッチシリーズの負け越
しは既に決定している。Lionsの誇り。それだけをかけた試合。
と書いたものの、この試合のLionsの凄さを、“誇り”という一言で表現し
ていいのか、という気はする。誇りだけあってもテストマッチは成立しない。
まず選手一人一人が一流なのが大前提。だけど、やはり、幾ら一人一人が優
れた選手でも、誇りがなければ、あれほどの試合は絶対できない、と強く感
じた。Lions 28対9 Springboks。
最初の20分位は、拮抗したチーム同士の試合らしく、ある種の膠着状態の
中でゲームが進んだように記憶しているのだけれど、Springboksは、振り落
とされまいとすがりつくのが精一杯といった様子。第一戦で食らいつくのが
精一杯に見えたLionsはそれでも何とか踏ん張って最後は追上げを見せていた
けれど、この最終戦でのSpringboksは、踏ん張って追上げるどころか、
Lionsのあまりの激しさに、途中で内部崩壊したような、そんな印象。
とにかく、Springboksがちっともゲインラインを超えられない。Lionsの
前、前、前。防御は最大の攻撃なり、の完璧な見本。“湧いて出る”という
言い方があるけれど、部分的ではなくて試合中の全ての局面で、常に、湧い
て出て来るLionsのプレーヤー。湧いて出るディフェンス、湧いて出るサポー
ト、フォロー。 1番から15番までのメンバーの名前と姿(湧いて出て来る
姿)が、全員、試合のシーンと共にはっきり頭に浮かぶ。8番は目立つけど6
番は、とか、11番は良かったけど14番は何してたっけ、とか、じゃなくて。
#1 Andrew Sheridan & #3 Phil Vickery いつも、牛(といっても
反芻はしません、走る牛です)と思っているんですが‥まさに“牡牛蒸気機
関車”=強力燃料タンクを搭載した牡牛(達)!
#2 Matthew Rees いてほしい時、いてほしい所に登場!
#4 Simon Shaw & #6 Joe Worsley いぶし銀!
#5 Paul O'Connell 吼えるライオン(笑)。プレーがどうのというより、
彼が(文字通り)「吼える」事でLionsがホントに百獣の王たるライオン
Lionsになるんだろうなあ。(因みに、きっとロッカールームでO'Connellが
吼えまくって皆のテンションを上げまくったであろう後、ピッチ上の円陣で、
最年長のShawが何か哲学的な面持ちで静かにメンバーに語りかけていたのが
印象的。話は逸れますが、この円陣を見ていて、England, Wales, Scotland,
Irelandの“永遠のライバル”同士が、Lionsという特別な機会において真の
意味で“チーム”になる事の奇跡のような素晴らしさを感じました。)
#7 Martyn Williams 仕事人!(Man of the Match)
#8 Jamie Heaslip 第一戦第二戦ではちょっと「?」だったのですが、
この試合は文句無し!
第一戦では“敗因”でさえあったFWが、この日は大きな“勝因”の一つ。
FW好きの私としては、#1〜#8があれだけやってくれると、もう、見ていて、
嬉しくてしょうがない。 Lionsのこの日のFW、平均年齢としては結構高い「お
じさんFW」ですが‥かっこいいー(←笑。ハートが8つ)と小躍り
してました。
#9 Mike Phillips 実はこの人、例の、“無造作にボールを持ち上げて
決してうまいとはいえないパスをするSH”(笑)なので、これまで好きじゃ
なかった。でも、これだけDFしてくれればキレイなパスなんか投げなくても
いい、許す(←私が許すの許さないの言うレベルではない)、パスのうまさ
より重要なのはプレーの炎だわ、とつくづく思いました。
#10 Stephen Jones 極めて地味な選手なのでいつも損してるような。
私的にはその、花形ポジションには珍しい地味さ加減、というか、ついてな
さ加減、みたいなのが何となく気にかかっていて、この試合でもイージーな
正面のキックを(ボールが倒れて)はずしたりする場面があり、グランドス
ラムマッチのラストプレーでIrelandの夢を打ち砕くはずの逆転PGを「はずし
た」光景や、もっと遡ってW杯で“あれさえ決めておけば勝った”キックを「
はずした」光景(‥彼の名誉のために言うと、決してキックが下手なわけで
はありません。それが証拠にLionsのキッカーなわけだし)等が走馬灯のよう
に頭を駆け巡り、「‥もしLionsが惜敗する事になったら、彼が頭を抱える姿
をまた目にしなきゃいけないのか」と心細く思ったのですが、全くの杞憂に
終わりました。あー良かった(特にファンではないのだけどつい)。Good
Job, Well Done!
#11 Shane Williams ここまで不調(だったらしい)も、大活躍。“美
味しいところを持って行く”スター(笑)。でも、凄く狭いスペースに瞬き
する間にスルスルッと走り込んでくる感覚は彼ならでは。
#12 Riki Flutey Jamie Roberts(Lionsのツアー通じてのMVP=Player
of the Seriesを獲得)に代わってのこの日のスタメン起用でしたが、全く
遜色無いどころか、#12かくあるべし、みたいなパフォーマンス。NZにいた
頃に見た記憶ではどちらかというと“フレアー”が持ち味の選手という印象
だったのですが、その頃より数段格が上の選手になったように見えました。
#13 Tommy Bowe Jamie RobertsとBOD(第二戦の脳震盪により最終戦ス
コッドから離脱)のコンビを凌ぐミッドフィールド陣なんてありえない、と
思ってました(大体Tommy Boweがセンターやるのって見たことなかったし)
が‥きみ、すごいよ。
#14 Ugo Monye 正直影が薄かったんですが、勝利を決定づける(ハバナ
の十八番プレーの、お株を奪う形での見事な)インターセプト&70mのラン(
トライ)でヒーローの一人に。良かったね。パチパチ。
#15 Rob Kearney 私はLee Byrneも凄くいいFBだと思っているのだけど、
Kearney恐るべし、という感じです。ハイボールキャッチの世界基準というも
のが、彼のプレーでリセットされたように思う。
と、“湧いて出る”記憶(笑)でずらずらと書いてしまいましたが、いや
あ、ホントに堪能しました。
これまで、「Lions」すなわちEngland,Wales,Scotland,Irelandのプレー
ヤー達で構成されているモンだ、そういうモンだ、と当たり前のように思って
いたけど、今回今更ながらに、Six Nationsやそれ以外でも常に永遠のライバ
ルである国々の、しかもその各国それぞれの誇りを誰より重く担っているトッ
プ選手達が、4年に一度「Lionsというチーム」になり、「Lionsの誇り」を背
負ってプレーする(先程、試合前の円陣のシーンのところでも書きましたが)
“奇跡のような素晴らしさ”に気がついた。
世界最高峰のゲームだなあ、と思いながら最終戦を見ていたのだけど、そ
れもそのはず。Lionsというチームそのものが、ラグビーの世界における最高
の奇跡の一つだもの‥。
プロフェッショナルラグビーの時代に於けるLionsのようなチームの今後に
ついて、疑問の声も出ていたようなのだけれど(この最終戦があまりに見事
だったので、そんな声は一気に消し飛んだようですが)、Lionsをなくしてし
まうなんてとんでもない!
ラグビーの大いなる遺産、この先もずっと続いていってほしい。
というわけで、Tri Nations開幕前から気が早いのですが、End of Year
Tourが今から楽しみ。ここ数年、End of Year TourでABsが欧州に遠征して
負けるような気もしなかったし負けた記憶もないけれど、あのLionsを見たら、
北半球、やってくれるのではないか、と期待が高まります。‥ABsファンであ
る事には変わりはないのでABsが負けるのを見たいわけではないけれど、やっ
ぱり今年はLions、Lions、Lions!!! じゃなかった、北半球、北半球、北半
球!!!って感じ(笑)です。
<おまけ>
もう終わってしまってからで何なのですが、“ライオンズ” のトレーニン
グ風景2種。
http://www.youtube.com/watch?v=Qd9amiLqIyc
http://www.youtube.com/watch?v=4LBdtWb29bI&feature=related
デカイ相手に一人でいこうと思うな、バラバラの個人じゃないぞ、まとまって
いけば出来る、それがLionsだ‥(ふーむ、と思わず頷いちゃったりして)。
ストレッチしとけよと言われれば、身体を伸ばし、明日は大事なゲームだか
ら早く休めと言われれば、ちゃんと寝る、素直なライオンズです。BODが、「
もちょっと低く。腰から下を狙わなきゃ」「うん、ちょっと高いけどナイス!
」とかって、タックルコーチを担当(?)しているのを見て、彼、「スクー
ルのコーチ」に向いてるかも、と思いました(よし、引退後の道は決まった
ぞ←勝手に決めるな)。
2009/07/14 佳
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