No.102 メモリー
常翔学園安曇野ミニ合宿の宿舎となっているG宿。スクールのTさん(
いつも、氷の手配をはじめ熱心に応援していただき本当に感謝!)のお宅
はそのすぐそば。
夏が近づきG宿の前を通りがかる度、ああ、もうすぐ常翔学園の合宿だ
なあ、と思って(夫婦で)話してるんですよ、と先日、奥様(大阪出身)
がおっしゃいました。
「ああ、もうすぐやなあ。かよこさん今頃ソワソワしてるんやろなあ」
「そうやね。‥“常翔の夏、かよこの夏”(←“ニッポンの夏、金鳥の
夏”の節で)!」
ひとさまの口の端にそのように(「かよこと言えば常翔学園」)の
ぼってしまうほど、大好きで、実際ソワソワと楽しみにするはずの、常
翔学園ミニ合宿。
しかし今年は、どーっぷりと浸り切る事の出来ない事情がありました。
遡る四月。我家の猫の1匹が腸閉塞になりかけ、急な手術を受
ける事になりました。手術は成功し、喜んだのもつかのま、閉塞を起こ
しかけていた原因の腫瘍の検査結果で、悪性リンパ腫だという事が判
明。もう、あまり長くは生きられないかも、と。
連休に、サニックスワールドユースへ常翔学園を応援に行く予定を取り
やめたのはそういうわけでした。
それでもしばらくは元気に過ごしていてくれたのですが、六月頃から
段々と食欲が落ちてきました。その内自分では何も食べないような状態
になり、七月半ばからは毎日皮下注射で水分栄養分の補液を行なってい
ました。
八月四日。午後には常翔学園さんの一行が到着するというその日の午
前、とうとう呼吸困難に陥り、幸いすぐに処置してもらえたお陰で容態
は落ち着いたものの、胸水がたまったり内蔵のあちらこちらに転移がみ
られたり、といった状態で、別れの時が近いのを覚悟させられました。
常翔学園さんの合宿中は、一旦グラウンドに行っては、様子を見たり補
液の皮下注射をしたりするため家に帰る、そして又グラウンドに行く、
という感じでした。
幸い、というか、私は特別な仕事を担っているわけではなくただひた
すらぼーっと(目とおつむが完全にハートマーク状態で)見ているだけ
という有り難い役回りで、やるべき事は、前述のTさんやMさんやIさんや
Nさん等、強力メンバーがしっかりサポートして下さっているし、常翔学
園の皆には、別に私がいなくったって何も問題はない、だけどうちの猫に
は私がいなくてはいけない、だから最優先はこちらに置く、と、迷うこと
なく決断し、少しでも異変がありそうなら「ごめんなさい」と不参加する
つもりでいたのですが、結果的には四日午前のあとは容態は落ち着いてい
て、七日、無事に一行を菅平へ見送る事ができました。
その日の午後(夕方)再び胸水をとってもらいに病院へ行った時は、
浮腫や黄疸の症状が見られたものの、ゴハンを口に入れてもらうとちゃ
んと飲み込んだり、診療の後のほうが前よりも元気になっていて、とり
あえず毎日補液をしながらしばらく様子を見ていかなきゃな、と思って
いました。ところが、翌日(今日)、急に又呼吸困難の症状が現れ、病
院に着く迄の間にあっけなく絶命してしまいました。
別れの時が近いのを覚悟していた、と言っても、今日だってヨロヨロ
とはいえ自分で歩いてトイレに行ったりしていたのでまだ体力生命力が
残っていると思っていたので、予想外でした。
だけど、こういう言い方は変なのですが、絶妙の死に方だな、と感心
しました。
異変があったら「ごめんなさい」するつもりとは言え、やはり実際、ミ
ニ合宿の直前や最中に死んでしまっていたらどうだったか。
無事常翔学園さんを見送り、やれやれと一晩ゆっくり寝た翌日の休日。
用事をあれこれ済ませて、夕方、ちょっとそばに居てようか、と部屋に
いたタイミングでした。体力生命力が強い分まだしばらくは長らえて、
でもこれからは段々今以上に弱っていって苦しむ事になるのだろうから
可哀相だな、と思っていたのですが、飼い主に見ているのが辛いと思わ
せる事もなくスッと逝った。
菅平への常翔学園の応援も、今年は当然のごとく無理だと思っていまし
たが、まるで「行っておいでよ」と言ってくれたような、そんな死に方
です。
この子だけではなく、今迄みとってきた沢山の子達すべてそうなので
すけれど、猫って(我家にいるのがたまたま猫なだけで犬とか他の動物
でもそうなのでしょう)ホントに偉いというかスゴイ。
不平も泣き言も言わずじっと耐えて、生きられる内は一生懸命必死で生
きるし、生きられなくなったら見事に潔く旅立つ。
この子を拾ったのは15年前の八月末でした。出会って丁度15年になるま
で、それまで頑張って生きてくれるのかな、と思っていたけれど、そこま
では生きられなかったね。
命日は八月八日。
末広がりが二つ重なる。ずっとずっと、つながる、つながっていく、と
いう事だと信じよう。又いつかきっと巡り会おう。
今年の“常翔の夏、かよこの夏” もやっぱり嬉しくて楽しくて幸せな
4日間でした。
そう、猫の事があって、頭も心も少し上の空で集中しきれなかった面も
あるけれど、色々と心に残った事もたくさんありました。それらについ
て今日は書かないけれど、紛れもなく大事なメモリー。いや、もしかし
たら、だからこそより記憶に刻まれる一年になるのかもしれない、と
思っています。ずっとつながる、つながっていく、そんな夏になるのか
も、と。
ラグビーについて書きとめるはずの「ノート」ですが、今回は横道に
それてしまいすみませんでした。
2009/08/08 佳
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