No.105 2009 Tri Nations No1(#1-#7)

今年のTri Nationsは今日で全9試合が終了しました。
各試合後に書きとめてきた感想を、今日の分を含めて一挙公開です。

初戦 ABs vs Wallabies(1)

ABsが勝ったものの、公正なラグビーファン(のつもり)の目にはかなり
ABs寄りの判定だと感じられて、ホームゲームだから勝てた、ジャッジに助
けられた試合だった、ように見えました。
つまり、ABs自体は全然良くない。
にもかかわらず、NZ国民のリアクションは、「伊戦ではパッとしなかった
ABsだが、Tri Nationsではさすがに実力を発揮して勝利!」みたいな、肯
定的というか素直に喜ぶ声が多くて、あまりにも単純すぎるのではないか、
とつい首をひねった。

第二戦 Springboks vs ABs(1)

この試合にABsが勝つのであれば、「首をひねっていたりしてご免なさい、
やはり天下のABs、強かったのね」と謝らねば(誰にだ)いけなかったとこ
ろですが、なーんか、そもそもピッチに出て来るところ、国歌演奏の時の
表情やハカ‥からして、ぜっんぜんメラメラしたもの(勝負の炎)が感じ
られない。この時点で試合そのものへの関心も失せてしまった。
‥どんな試合だったっけか。いつも、メモもとらず記録も見直さず殆ど“
印象”だけで試合について書いているので、心に残っている事がない試合
だと何も書けません。

第三戦 Springboks vs ABs(2)

この試合のハカは、これまでこれをやった時には負けた事が無い、Kapa
O Pango。だったのですが、
「‥これでついに、“Kapa o Pangoでの初めての敗戦”になっちゃうんだ
なあ」と、思いながら見ていた。
試合を、じゃなくて、ハカそのものを。
そう。前節に続き、ハカの最中、つまりキックオフ前、に既にABsの負けを
予測出来てしまう雰囲気。
予測を覆す闘いぶりを、いざ試合が始まったら見せてくれた、と言えたな
ら嬉しかったのですが、チャレンジャーですらないプレーぶり。
HP管理者のIさんから「ABsはひどいレベルでしたね。
10月に来る時にはこんな試合は見たくないですね。」とメールが来た(「‥
でも、Tri Nationsをこのまま終えてしまうようだったら、10月の
Bledisloe Cupも盛り上がらないまま、という事になってしまいそうです‥
」と、つい弱気な返信をした)ほどの拙攻でしたが、たまたまミスが多かっ
た結果の負け、なのではなく、負けるべくしての負け、だと思えるこの弱々
しさ。一体どうした事だろう。

第四戦 Springboks vs Wallabies(1)

Springboksの強さをまざまざ見せつけられた。Wallabiesも良かったんで
すけどね(少なくともABsよりは)。一人一人を思い浮かべてみるとギタウ
もモートロックも別に好きじゃない (バーンズは結構「イイ」と思ってま
すし、ミッチェル君とO’Connor君は可愛いし見ていて楽しい←笑)んだけ
ど、でもWallabiesのBK、躍動感があって良いなあ、と思う。99年W杯を制
した時のBKがすごく好きでしたが、今のWallabiesもなかなか。この試合の
序盤、右サイドのラインアウトから#9→#7(George Smith)→#10→#12→
#15で一気に逆サイドまで運んでの先制トライも鮮やかだった。
しかし、それを上回るSpringboks‥私は(U20s大会のBaby Boksについて
も書いていましたが)南アの“飛び道具多用” がどうにも好きじゃなくて、
「そりゃ強いかもしれないけど、なんか、ヤだなあ、こういうラグビー‥」
と不満だったのですが、この試合の24分位のSpringboks、連続攻撃の最後
のフェーズで#10(M.Steyn)がDGを決めた時には思わず拍手。そこに至る
まで(攻めて仕掛けて翻弄して‥)がとても見事だったので、「あの流れ
で最後にDG、これなら納得!」とTVの前で頷いていた。そしたら、直後に
素晴らしいトライも出て、再び「‥イイじゃん!!」。‥何だか、自分がABs
ファンなのか自信が持てなくなってきた(笑)。
でもやっぱりSpringboksは、チームがどうのこうのっていうより、それぞ
れの選手の才能だなあ。最近BrussowというFLが目覚ましい活躍ですが、こ
の第四戦でも光ってた(この試合では、もう片方のFLのJuan Smithも凄く
良かったし)。

第五戦 Wallabies vs All Blacks(2)

ABsが開始早々のPGで先制したあとは、ずっとWallabiesペース。ボールを
支配している時間やテリトリーは圧倒的にABsが上回っていたのだけれど、
つまり本当なら大差で勝っていてもおかしくないのにリズムが掴めない。
迫力がない。Wallabiesのほうが余程ファイトしてると思った。けれど何故
か(強いて言えばやはりこの試合で復帰のDC効果か)勝っちゃいましたね、
ABsが。
そして、この勝利に又も皆さん(NZの人達一般の反応)双手を上げての素
直な喜びようでしたが‥ついていけない。しばらく前まで自分のこと“NZ
人”だと思っていましたが、違うな(当たり前)。ABsが負けたからってあ
んなにカッカしたりうろたえたりしないし、勝ったからといって手放しで
喜んだりしないし。尤も、内容を問わず、負けを悔しがり勝利に執着する、
国民全体がラグビーにそこまで一喜一憂する事を、否、と断じようとも思
わないけど。悪影響も大きいかもしれないけれど、それを含めてNZのラグ
ビーというか伝統というか‥きっと、そういう中でしか生まれてこないも
のもあるのだろうと思うから(‥それが見たいんだけどなあ)。

第六戦 Wallabies vs Springboks(2)

前節で既に、今年のBledisloe Cup(奪還)の望みを断たれたWallabies。
それでもここから連勝すればTri Nationsのタイトル争いには踏みとどまれ
る可能性も残っていた。何より、初戦から4連敗は避けたいところ。しかも
ホーム。
なので、緊迫した試合になるのかな、と思ったけれど、Springboks強し。
かなり一方的な展開でした。終盤Wallabiesが追上げて7点差以内のボーナス
ポイントを獲得する執念を見せたけれど、Springboksには余裕があったよ
うに見えました。‥あれ、この流れって、Lionsシリーズのテスト第一戦に
似てないか?願わくば、Lionsがそうだったように、Wallabiesも最終戦で
はSpringboksを気持ちよく撃破してほしいもの(特にWallabiesが好きで
Springboksが嫌いというわけではないけれど、Springboksが強すぎてつま
んないのと、Wallabiesはひいき目なしに見て決して“ふがいない試合”を
してないから、報われるといいなあと思っている)。

第七戦 Wallabies vs Springboks(3)

ついにWallabies待望の勝利。
互いにPGのみの得点で、Wallabiesが9対6と僅か3点リードで迎えた後半50
分頃、ゴール前ペナルティからの速攻でSHがトライ、と思ったのに、TMOで
相手SHのデュプレアがボールをもぎとって阻止していた事が判明。がっく
り。
しかし、意気削がれること無く、押せ押せの雰囲気で攻めまくるWallabies。
60分すぎには、#12バーンズのライン突破から、瞬きの出来ない展開。#10
ギタウのゴール前へのキックを右WTBがチェイス、それをboks CTBジェイコ
ブスが間一髪で拾い上げて簡単にタッチに出さずに味方へつなごうとパスし
たのを、逆にギタウがキャッチしそのままゴールへ飛び込み、これまたトラ
イ、と思いましたが、boks CTBフーリーの必死のタックルを受けて惜しくも
タッチラインをかすってました(うーん。それにしても、どっちのチームも
反応が速くてすごいわ)。
‥トライがなかなかとれないWallabies。でも視線を下に落とさない。
そして「それ」は5分後にやってきた。
#13アシュリークーパーが、ど真ん中を突き破るトライ。ガッツポーズを作
りながらゴールポストをくぐり抜けボールをグラウンディングしたアシュ
リークーパー、そのままゴールポスト裏の観客席へまっしぐら、お客さん
達と抱き合ってましたが‥あの人達って知り合い?(笑) しかもアシュ
リークーパーだけじゃなく何人も走りよって来て飛びついたり抱きついた
り、まさにお祭り騒ぎ。とれなかったトライが「とれた!」という事と、
「勝った!」という喜びの爆発、でした。
残り時間15分で10点差はboks相手には全く安心できない状況だけれど、「
勝った!」という感覚は確かにあったと思う。見ていてそう感じた。
事実、残りの15分、全くハラハラさせられる事なくWallabiesが好きなよう
にやってた、という印象。あの15分間、Wallabiesの選手達はプレーしなが
ら楽しくてしょうがなかったんじゃないかな。一度ミッチェル君がタッチ
に押し出されたところで、カメラと目が合った場面があったのだけど、そ
こで、ニッと笑顔が出たもん。
テストマッチの最中に選手がカメラに向かって笑いかけたのって初めて見
た。楽しそーやなー、と思いました(笑)。そして仕上げはO’Connor君の
駄目押しトライ。この試合に至るまでのWallabies、結果が出なかったけど
強気でバンバン攻めてるし必死で守ってるしすごくファイトしててイイの
になあ、と思ってたのがやっと報われたわけだけれど、O’Connor君も今シ
リーズずっと、ボールを持つたびに解説(副音声)も観客も「来た!」と
いう感じで集中するのが伝わってくるほどの注目の中で、あたふたしない
プレーぶりが見事でした。私が見ていた範囲でミスはたったの1回だけで、
それも、判断ミスではなかった。あれだけ若いと、自信が揺らぐとか、逆
に自信が強すぎるとか、どこか地に足がつかないところが出そうなものな
のに、大したもの。
「よく頑張りました」。このトライは勝利の女神からのご褒美みたいで、
緊迫感というよりは、競技場全体が少しほんわかした(これもテストマッ
チでは珍しい)光景だった。
さて、Lionsが、そしてWallabiesが見せてくれた「強敵Springboksの倒し
方」。All Blacksは果たして。



                        
                           2009/09/19 佳
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