No.106 2009 Tri Nations No2(#8-#9)

第八戦 All Blacks vs Springboks(3)

9月12日ライヴ終了時点で、前半の25分位から後半の10分近くまで30分ほ
ど(丁度その時間に来客があって)見逃しているのですが、とりあえず、
見たところだけの感想をメモしておこう。
まず、ハカのリードをしたのがMcCawである事に驚く。試合は、
Springboksがキック力を存分に活かしてABsにプレッシャーをかけ続ける。
#15 F.Steynの60m超のPG2本(副音声解説が、この後、ハーフウェイより
少し出た50mちょっとのPGの時、「問題ないでしょう。‥すごく簡単なPGに
見えてしまいますな‥」みたいに言ってましたが、自陣でうっかり反則で
きないどころか相手陣10mでも反則即3点ですもん。キツイですよね)やら、
#10 M.SteyneのDGやら‥。DCも角度のあるところからのPGを1本もはずさ
ず入れていたので、何とか試合の均衡は保たれていたのだけれど、その後
Springboksがトライをとってきたのは「やっぱりな」という感じで、ABs
のほうは果敢に攻めてもミスが出てトライに至らず「やっぱりな」と思え
てしまう。
キック力のプレッシャーも大きいけれど、ABsが、真っ向勝負で突破を試み
る或は五分五分の際どいパスを試みる(良く言えば非常に「面白いラグビー
」をしようとしていた)のをことごとく破綻させていたSpringboksのDFの
プレッシャーも非常に強力(ABsの“自滅”と思って見ていたけれど、当然、
SpringboksがボールをつながせないDFを徹底していたからそうなっていた
わけで‥)。
後半10分近くのところでTVの前に戻った時、「おや、まだ10点差なんだ」
と感じたくらい、Springboksが圧倒的に優勢、という印象だった。
後半10分すぎ、DCのパスがインターセプトされてトライ&コンヴァージョ
ン。これは痛かった。17点差。もう無理だろう、と思った。これをひっく
り返せるようだったらABsも大したもんだけど、トライまでつながるような
気がしない、と。そしたら、そこから、Springboksの、突破をさせない/
パスを通させないDF、その裏をかくように、ABsが思い切って長いパスや
キックパスでのアタックを始め、それが功を奏す。ようやくの初トライ&
ゴールで再び10点差。次の得点チャンスもABs。ゴール正面でPGのチャン
ス。しかし、ここで何を思ったかスクラムを選択し、しかもSpringboks
の猛プッシュでターンオーバーされてしまった。試合直後のインタヴュー
でMcCawが「何故あの場面PGで3点をとりにいかなかったのか」と聞かれて、
結果から言えばあそこで狙っていたほうが良かったという事になるんだけ
ど、と言いつつ選択自体を悔やんでいる様子ではなかったですが、何と答
えているのか肝心の部分がわからなかった‥、ああ、英語耳がほしい(;_;)
しばらくして再びPGチャンス。今度は狙って3点獲得。 7点差。残り15分。
この後Springboksが3点を加え、この試合何度目かの「10点差」になって
Springboksに余裕が生まれるかと思ったのだけれど、さにあらず、で、
ABsが(というよりDCが、に見えたけど)SpringboksのDFの「穴」を発見
したかのように右に左に揺さぶり、最後は大きく右隅へのキックパスが見
事に決まって、トライ。端からのコンヴァージョンを、これも見事に決めて
3点差。
残り1分。
17点差がついた時に思った言葉が再び頭に浮かぶ。(この時間では)「も
う無理だろう」と。けれど、リスタートのキックをしっかりとマイボール
にした後、どんどん前進するABsを見ていたら、「これをひっくり返せるよ
うだったらABsも大したもんだ」「トライまでつながるような気が」『する!
』と思えてきた。
80分を超え、DCが今度は左隅へのキックパス。先のトライの時のように、
そこに至るまでの揺さぶりによりスペースは大きくあいているので、キャッ
チできていればトライ=逆転勝利だったのだけど、キックがやや大きすぎ
タッチに出てしまいノーサイド。
クレオパトラの鼻ではないですが、ダン・カーターのキックがあと2、3m短
ければ、と誰もが思った(であろう)瞬間でした。
Springboksの久しぶりのTri Nations優勝が確定。「やっぱりな」なのだ
けれども、ABsの最後の攻めっぷりに、今シリーズずーーーっと真っ暗闇
だった中、一筋の光明が見えたような気も。
NZ国内のメディア、国民の反応が、“Springboksに3連敗、どうなるABs?!”
などと危機感を煽るものではなく、手応えを自信に変えられるようなサ
ポートでありますように。
‥だけどあまり楽観的すぎても心配。ま、決して楽観はできないな。結局
Springboksに一度も勝てず終わったABsに対し、Wallabiesは何てったっ
てSpringboks相手に勝利をあげたんだし。
というわけで最終戦は、優勝もBledisloe Cupも決まってしまっているけ
れど、互いの意地をかけての熱戦になりそうで、今大会初めて(やっと)
「楽しみー」と思えるゲーム(泣&笑)。

第九戦 All Blacks vs Wallabies(3)

「楽しみー」なワクワク感の割に、普通というか地味な試合だな(少なく
とも前半)、と思いながら途中までは見ていた。
Springboksに三連敗、そしてもし今日負ければABs史上初の“Homeでの1
シーズン3敗”になってしまうという厳しい状況で、しかもWallabiesは
前々節Springboksから会心の勝利をあげており調子をあげているはず、と
の予測の元、意地と意地とがぶつかり合う、火花が飛び散るような熱戦を
期待していたわけで、その想像からすれば、両チームの表情やプレーはあ
まりに淡々としていて物足りないくらい。メラメラした勝負の炎、なんて
ものはちっとも感じなかった。けれど、途中で、何だか納得できてしまっ
た。新しい事、変わった事を試すでもなく、あっと驚くような仕掛けをす
るでもなく、ただ、DFの真ん中に突っ込んでいっては味方を待ってボール
をつなぐ、味方が敵に当たった瞬間に必ずサポートに入る、ボールがこぼ
れたら身体を投げ出してゆく、‥ものすごく当たり前の事を愚直なまでに
やり続けているABsを見ていたら、ふと、感じるものがあったから。
今日のABsは、綻びを慌てて繕ったり、普段やらないような秘策でもって局
面の打破を目論んだりといった様子がまるで無くて、普段自分達が練習し
ている通りの事を練習通りにやろうとしているように見えた。普通で地味、
と思ったのはそのせい。
だけど、これこそが、「いつもと同じように」やる(No.82)っていう事
じゃないのか。
途中でそう気がついたら、何だかものすごくABsが頼もしく見えてきて、
「もし“この試合”を失ったとしても、彼らがやってる事は間違ってい
ない」とまで思えた。
去年のTri Nationsの時、
『(次のW杯までの)これから丸3年以上の間には、障害や挫折もあるのだ
ろうけれど、そのたびにそれを糧にして更に強くなれ。(‥略‥) その
長いレースの最初の一歩、なんだと思う。』
と書きましたが、そういう事なんだ。
今季苦しんで惨状を呈してきたけれど、昨日今日ラグビーを始めたわけ
でもないトップレベルのチームに即効薬や特効薬などあるはずもなく、
又、そんな急場凌ぎが本当に自分達のためになるはずもない。
新しい事、変わった事、あっと驚く仕掛け、秘策‥を試してみる、自分
達の力以上120%200%を出そうと必死になる、そうした姿勢は大事だし、
私自身つい先日も、自分達の“普通の戦い方”なんかしていずに「最後ま
で保つのかとか最後まで通用するのかという、そういう計算など抜きで」
「相手がたじろぐ位、最初から牙を剥いて向かって行」かなきゃ、と書い
たばかりで、それとは矛盾する事を言っているようだけれど、実際、(大
事なトーナメントのいざという場面で)出せるものというか最後にモノを
言うのは、普段やっている事、これ迄やって来た事、つまり、いつもと変
わらない自分達の姿を如何にそのまま出せるかという事であるには違いな
い。
そう思い当たって見ていたら、今日のABsは一人一人が実に“らしかった”。
「いつもと同じように」。合い言葉でも口にしているかのようにそれぞれ
が自分らしい自分達らしいプレーをしていた。DCはDCらしくプレー(例え
ばキックパスだって、別にこの試合のスペシャルというのではなく、練習
でごく普通にやっている事だろう)し、McCawは“献身”、Nonuは“強靭”
‥。
そんなわけだから皆それなりに良かったのだけれど、目立って光っていた
のはCory Jane。
いつだったか、「NZのWingerは、もう、アイランダー系の人しか考えられ
ない」などと言った事は、自分としては既にZacGuildfordであっさり撤回
しているのですが(笑)、Cory JaneはFBだったりWingだったりで(今日
はWing)、ハイボールへの対応力、走力、視野、パスの能力‥もちろんど
れも優れていなければつとまらないけど、あえて「どこが特別凄い」とい
うよりは「いつも思い切りが良いところがイイ」と感じる。今日は
Wellingtonでのゲームでしたが、Janeをはじめ地元(Super14で言えば
Hurricanes)で馴染みの選手達が大いに活躍した事もあって、会場は「All
Blacks! All Blacks!」の掛け声はもちろん、歌まではじまったりと、
今季最高の盛り上がり(地味な試合だったはずが、結局は、Wallabies相手
のテストマッチとしては珍しくABsに3つもトライが生まれた)。試合後、
キャプテンのMcCawが「会場に足を運んでくれた人達、チームが苦しい時に
サポートしてくれた人達、彼らの応援が力になった」とコメントしていま
した。
その時のMcCawを見ていても、必要以上に高揚しておらず(ものすごく嬉し
そうだったり、紅潮した顔で幾分興奮気味にインタヴューに答えるのも個
人的には好感を持ちますが)、やはり淡々と自然体だった。もしかしたら
ABsはホントに、ある意味開き直ったのかも。
いつもと同じように普段通りにプレーする。その難しさを知った上で、あ
えて、それこそ自分達のとるべき道だと皆で肝を据えたんじゃないか、そ
んな気がしたキャプテンの表情だった。
一つのミスや一試合ごとの勝ち負けや成績に一喜一憂せず、という態度は
敗者のWallabiesもまた然りだった(キャプテンのG.Smithのインタヴュー)
今日に限っては9対33の完敗だったけれど、今季の負け試合の内容の「良さ」
を見ていると、Wallabiesの持つ力というのはヒシヒシと感じられるし。
McCawが、「10月末の日本でのBledisloe Cupで又お互いにいい試合をしよ
う」と表彰式のスピーチで言ってましたが‥、わー、何だか東京では<
Wallabiesの逆襲>とかがありそうでコワイ‥。
昨日までは、Bledisloe Cupの宣伝の「世界最強対決」のコピーを、「‥
嘘やん」と醒めた目で見ていましたが(関係ないけど、ローソンチケット
HPの、Bledisloe Cupについての説明文‥‥ニュージーランド代表・オール
ブラックスと、過去のワールドカップで唯一2度の優勝経験を持つオースト
ラリア代表・ワラビーズの伝統の一戦、「ニッスイブレディスローカップ」
が日本で行われることに! 1987年以降のラグビーワールドカップで6度、
どちらかの国が優勝している‥‥。間違いが少なくとも2つはありますよね
え)、今日の試合で、(「世界最強対決」と言えるかどうかはともかく)
10月31日に期待が持てるようになった気はする(「ニッスイ」さんのチ
ケットプレゼントに応募したので、当たったらスクールのメンバーにあげ
るからね!)。
それにしても今日の試合では、O’Connor君が華々しいデビュー後はじめ
て“テストマッチの厳しさ”の洗礼を受けた感じでした。きっと彼は今晩
悔しくて眠れないだろう(笑)。悔しがれ、悔しがれ。ミスや勝ち負けや
成績に大いに一喜一憂すればいいのよ、若者は(爆)。
‥多分、読んで下さるかたからすると、私の言ってる事、左だったり右
だったりハチャメチャに聞こえるのでしょうが、自分の中ではこれでも
統制がとれていて、原則左だけどこういう場合は右でいいんだ、右が大
前提だけど左も必要だぞ、みたいな、自分なりの判断基準というか自分
で納得できるポイントというのがあるんです(でもうまく説明できませ
ん←笑。すみません)。
これ以上書いてますますハチャメチャ化する前に、今晩はこれで、おや
すみなさい。

                        
                           2009/09/19 佳
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