No.124 Six NationsとInvictus

 Six Nations。
ひいきのScotlandは、Italyにも敗れ、ここまで白星無しの(暫定)最下
位。
最終節の相手は、my favourite teamである、しかも、Franceに敗れて2年
連続Grand Slamは断たれたものの、この試合に勝てばTriple Crown
(England,Wales,Scotland,Ireland のいずれかが他の3国全てに勝利す
る)の称号を手中に納める事になる、Ireland。普通なら「行けー、
Ireland!」なのですが、しかし―。Scotlandは本当に惜しい試合ばかり(
初戦Franceとは9点差、次のWalesには<奇跡の大逆転負け>、Italyとは
4点差。先週のEngland戦は粘って同点!)で、何とか結果が出せると良いの
に、と、ついScotlandを応援。いや、実は「つい」ではなく、Scotlandの
借り(第二節の事です、もちろん)はScotlandで返さにゃあかん(←わかっ
たようなわからないようなたわごと)というわけで、結構力を入れて応援
しました。
 すると私の応援が功を奏して(なわけはない)‥大会の序盤で、不必要
に深い、というか、深さを活かし切れていないのがもったいないーっ、と、
もどかしく見ていたラインが、ばっちり決まっていて、シャープでイキイキ
したBKと「ひたむき」を絵に描いたようなFWの動きが素晴らしく、「‥やっ
ぱり好きかも、スコットランド。んー、LOVEー」などとうっとりしてた(
相変わらずアホですな)ら、ほんとに勝っちゃいましたー。おおおー。
Scotlandの選手達の笑顔って滅多に見られないので、新鮮というか嬉し
いというか‥。何か、いい感じ。
しかし、誰より笑顔だったのが監督のAndy Robinson(元Englandコーチ)。
IrelandのKidney監督なんかは勝っても負けても穏やかでそこが素敵なの
ですが、Robinsonは対照的。ですが、あそこまでリアクションがわかりや
すいとそれはそれで面白い。 負けてる時は思いっきり不機嫌そうだけど、
勝利後の満面の笑みにはつられて笑ってしまった。いやいや、良かった良
かった(ご免、Ireland)。
 2010年Six Nations結果は下記の通りで、FranceがGrand Slam(完全優
勝)を果たしました。
Ireland vs Italy 29 対 11
England vs Wales 30 対 17
Scotland vs France 9 対 18
Wales vs Scotland 31 対 24
France vs Ireland 33 対 10
Italy vs England 12 対 17
Wales vs France 20 対 26
Italy vs Scotland 16 対 12
England vs Ireland 16 対 20
Ireland vs Wales 27 対 12
Scotland vs England 15 対
15 France vs Italy 46 対 20
Wales vs Italy 33 対 10
Ireland vs Scotland 20 対 23
France vs England 12 対 10
眺めるだけでも、やっぱり各国とも、ちょっとした事で勝ち負けが入れ
違ってしまうくらいのところで競い合ってるなあという感じがしますよ
ね。同等の力があっても僅かな流れで20点位の差はすぐついちゃいますか
ら、最下位のItalyだってScotlandに勝ったりEnglandに5点差迄迫ったり
するだけの強さがあるし、終わってみれば至極当然に思えるFranceの優勝
にしても、最終戦なんかもEnglandが内容では勝ってたなという位で、一つ
違えばどうだったかわからない試合がなかったわけではなく、それだから
見応え十分でした。

 『インヴィクタス』。
なんで唐突にこれが出て来るのかというと、先日、映画を見た後でSix
Nationsを見たら「‥ホンモノやー」とつくづく思えてしまったので
(笑)。そう、やっと『インヴィクタス』を観て来たのですが、やはり
ハリウッド映画とはいえラグビーシーンに<ホンモノ>を期待してはい
けなかった。と言うよりハリウッド映画だからでしょう(NZ映画
とか英国の映画ならもうちょっと違っただろう。ついでに言うと、南ア
は予選リーグを勝ち上がるのが難しいと言われるようなチームではな
く、立派に優勝候補だったと記憶してますが‥)けど。ドスッとかブ
ンッとか、ぼんっ、うっ、など、やたら「音」で迫力を出そうとしてい
るのですが、どうにも。まあ所詮作りものなのだから、ホンモノのテス
トマッチの迫力がないのは仕方がない事だし、如何にもといった感じの
痛そうな音やしんどそうな顔もご愛嬌と許すとしても、決勝延長戦の最
後のシーン、スクラムを組みながらスコアボード横の時計を気にする選
手達とか時計がフルタイムを指すのを止まって待つ審判とか‥。あれに
は「ありえへんやろー」と椅子からずっこけそうになりました(笑)。
ラグビーシーン以外は(爆)いい映画だけど。
 マット・デイモン(ピナール主将)が独房の中にそっと入って、両手
を前後左右に広げてみるシーン。
昔、まだラグビーおばさんではなくロック姉ちゃんだった頃、投獄生活
を送っていたマンデラさんの釈放を求める歌とか、彼が収容されている
独房の事を歌った歌(*)を聴いていました。当時のブリティッシュ・
ロッカー達は政治問題をよく歌にしたし、アパルトヘイトも彼らの歌の
主題の一つだったから(USA系アーティストがノンポリだという
わけではないが※)。腕にマンデラさんの囚人番号のタットゥーを入れ
ているロッカーもいたっけ。
 せっかくだからロック姉ちゃん時代の曲を一つ紹介しましょう、アパ
ルトヘイト反対のプロテスト・ソングとして有名な、Little
StevenことSteven Van Zandtがプロデュースした『Sun City』(※)。
I, I,I ain’t gonna play Sun City!(俺たちゃ、サン・シ
ティーなんかじゃ演奏しないぜ)‥懐かしいな。
http://www.youtube.com/watch?v=fk6ye17lqBo&feature=related
 今、25年ぶり(ひええー)に見て、登場する顔ぶれに感動してしまいま
したが、この10年後のRugby World Cupにマンデラさんが大統領として姿
を見せる事を現実味を持って想像できた人が、当時一体何人いただろう、
と今更ながら思います。アパルトヘイト反対、とか、マンデラ釈放、とか
言ってはいても、本気で強く信じていられた人はそれほど多くなかったか
も。私も、あの頃Peter Gabrielが「six by six from wall to wall 壁
から壁まで6フィート四方」(*)と歌うのを聴いて、及ばない想像力で、
それでもそんなに狭い(恐らく暗く寒くもあるであろう)場所に数十年も
閉じ込められている人へ想いを馳せた。でも、理不尽さに怒りは感じても、
その理不尽さに自ら立ち向かう強さなどもちろん持っていなかった。い
つになったら釈放されるのか、それどころか果たして出られる日が本当
に来るのか。誰も確かな事はわからなかった中で、多分マンデラさん一
人だけが、いつかわからないけれど必ずその日が来るのを疑わずに、心
をくじくこと無く、星を見上げていたのだろう。
 というわけで、『インヴィクタス』はラグビー映画ではなく、あくま
でネルソン・マンデラの不屈と寛容の精神の映画です、間違わないよう
に(私だけですよね、間違って見に行ったヤツは)。
 それにしても、真に強い人っていうのは強さを武器にしないですよ
ね。今の時代(なんていうと懐古趣味みたいだけど)って、権力にせよ
お金にせよ文字通りのパワーにせよとにかく何でも強い事が賞賛され
て、そうしたものを持たざる者を落伍者とする傾向があるけれど、何で
そういう風になってしまうのかなあ。
ロックから離れて久しいけれど、今の時代にも“アウンサンスーチーを
自由に!”とかって歌ってる若者達はいるのだろうか‥。

                        
                           2010/03/22 佳

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