No.127 NZのいない決勝戦
出だしは例年になくまじめに視聴していたSuper14でしたが、 中盤以降
滞り、第14節(最終節)も見ていないのに決勝となってしまいました。
ラウンドロビン2位1位の南アの2チーム(Stormers,Bulls)に、3位4位の
豪(Waratahs)とNZ(Crusaders)が挑むという構図だった準決勝(これ
も見ていない)の結果、上位チームが順位通りに勝ち上がって、決勝は南
ア勢同士の対決。
‥なので大して気合いも入れず見始めたのですが(笑)、これがさす
がに凄い試合で、気がついたら力入りまくりで見てました。
何てタフなんだ。
優勝したBullsももちろん強いけど、Stormers、良かったなー、手抜きの
かけらもない、とでも言うのか、「私がこの試合に出たら(どうやって出
るんだ)1分と保たずに倒れるなあ」と確信したほど―、いや“出たら”ど
ころか、選手気分(になれてしまうおめでたい人間)で「こんな試合が出
来るなんて選手冥利に尽きる」と思ったほど―、それほどに見入ってしまうタフなゲーム。
試合後、敗者にさえ何とも言えない爽快さが漂っていたのは、力を出し
尽くしたからこそでしょう。
ラウンドロビン(Crusaders対Waratahs戦)の時に、「ラグビーって
つまるところ腕力と脚力‥」と書きましたが、トップレベルのチームや
試合を見ていると、そうした肉体的強靭さも含めて限界まで鍛え上げら
れた軍(と言っても私の頭の中にあるのは北方謙三描くところの梁山泊
軍や揚家軍なのですが‥笑)とその戦闘を想起させられる。
そう言えば先日のHeineken Cup(欧州選手権)の決勝、これも今年は
仏勢同士の決勝で、「‥フランスかよ」などと思いつつ気乗りしないまま
見たのに<(_ _)>やはり途中からは両チームの激しさに感心しきりだっ
た。尤も、この試合の敗者は爽快というより思いっきりがっかりした風で
したが。あと一歩、との無念が凄く強かった、それだけ必死で力を尽くし
て戦った、ってことなんだろうな。
Heineken Cupは、昨年、決勝(だけ)を見て「来年からはちゃんと」な
どと思ったくせに、結局今年も気がつけば決勝だった(反省)。で、決勝
が予想以上に素晴らしかったので、今更ですが準々決勝、準決勝の再放送
をぼちぼち(順番はランダムに)見ています。
準々決勝ビアリッツ対オスプリーズ戦で、あのングウェニア(ビアリッ
ツ)がトイメンのShane Williamsを振り切ってトライをあげるシーンがあ
り、W杯(南ア対USA)で“ハバナが追いつけなかったウィング”として一
躍有名になった彼に又一つ “Shane Williamsを抜き去ったウィング”と
いう称号が加わった。
そもそもHabanaやWilliamsが“凄い”、その前提があるからこそ印象に残
り、話題に上がる、というわけだし、ウィングとしてングウェニアが
HabanaやWilliamsを超えているかというとまだまだ決してそうは言えない
けれど、「Habanaよりも、Williamsよりも速い!」というのはそれだけで
ワクワクするものがあります。
スピードスターに理屈抜きにワクワク、と言えばSevens(7人制)。
私自身はSevensというのはいわゆるラグビー(15人制)とは全く別もの
だと認識していて、かつ私が好きなのは15人制ラグビーのほうなのです
が、SevensはSevensで親しみ易いし楽しい。個人の走力が際立つところ
が、わかり易い点であり何より魅力でもある。
少し前までは「SevensならFiji」という感じでしたが最近は(最近もも
ちろんFijiやSamoaは頑張ってますが)、昨年ケニアが大躍進したのに象
徴されるように、黒人系選手の<走る>能力の高さが目を引く。目を引く、
と言うより目を奪われる、と言うべきか。サバンナでチーターと一緒に
育ったのか(これって、“日本人”と聞いて“サムライ”と言う位に現実
とかけはなれた連想だと思うけど)、と信じそうになる。ああいう、バネ
というか筋肉の逞しさとしなやかさをはっきり感じさせる走りって、白人
や黄色人には真似できない気がします。オリンピック種目になった事で競
技人口が一層増えて来るだろうから、南アはもちろんそれ以外のアフリカ
の国々とか、アメリカとか、どんどん強くなりそう。
Sevensの勢力地図が塗り替えられる日はそんなに遠くないと思うし、
その事を歓迎したいと思う自分がいるのだけれど、ラグビー(15人制)は
そうした変化と無縁なのかと言えばSevensほど急激にではないけれど徐々
には変わりつつあって、それに対しては歓迎ではなく心配や憂慮を抱いて
しまっている自分がいる。
前回のW杯までは、何だかんだ言っても世界のラグビーの頂点はNZ、勝負
は水ものだから負ける事はあっても一番実力があるのはAll Blacks、だと
思っていました。
でも、来年のW杯に臨むAll Blacksは、間違いなく優勝候補の「一角」では
あるにせよ、決して優勝候補「筆頭」ではない。
今だけ来年だけ一時的にちょっと調子が落ちてという事ではなく、恐ら
く今後はこのような、All Blacksが二番手三番手の位置から何とか頂点を
目指す状況、というのがしばらく続くだろう。
そしてその後はどうなるのか。NZのような小国がこの先もずっと世界の
トップ(三番手まで位)にとどまっていられる、と考えるのは楽観的過ぎ
るだろう。というのが、私の“心配”であり“憂慮”。
日本人の私が、日本のラグビーの心配じゃなくNZラグビーの将来を憂慮す
るのも変なのですが、やっぱり、NZは the Heart of Rugby ハート・オヴ・
ラグビー だと思うから。
三番手からでも四番手からでもいいから来年の自国開催のW杯で何とか悲願
の優勝を掴みとり、そしてその勢いと熱気で、心配や憂慮を吹き飛ばす力
強さと層の厚さを獲得してほしい。‥頑張れ、NZ。
さてSuper14に戻って、こちらも、決勝の後で準決勝や最終節を見る、
などという事をやっていますが、最終節Crusaders vs BrumbiesのZac
Guilfordは胸のすくようなパフォーマンスでした。ああ、これが、遡って
見ているのではなくて、順序通りの最終戦(決勝戦)だったらどんなに良
かったか(涙)。
Heineken CupやSuper14を見終わらないままJune Testに突入となりそう
ですが、Gにはそこで、私のZac熱(?)が本格的に再燃してしまうくらい
の活躍ぶりを見せてほしい、です(たのむよっ。笑)。
2010/06/05 佳
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