No.132All Blacks vs Springboks at Eden Park 10 July 2010

All Blacksのゲームに、「ゆったり」しているなー、と思わせられるこ
とが時にある。
この場合「ゆったり」は褒め言葉ではなくて、もっと猛然とチャージにい
けばいいのに、とか(FWで勝ってるんだったらもっと)ガツガツ押してい
けばいいのに、とかいう、歯痒さ。
まあ“格下”相手との試合の時なんかはそれもやむを得ない面もあると
思うけど、BoksやWallabies相手の時でさえややもすると「受けて」しま
う傾向があって、「なんでもっとがむしゃらになれんのやろ(それができ
さえすれば勝てるのに)」とこれまで何度となく嘆いてきたものです。

そこに付入る隙がある。つまり、目線を変えて言うなら、例えば「JAPANが
世界に勝つとしたら」(‥All Blacksに勝つとは言わないけれど)相手が
ゆったり/のほほん/チンタラしている間にいかに開始直後から全力投球し
て自分達のペースに持っていくかが鍵、というのが見えてくる。素早い
ボール出しとか、ピンポイントのパスといった精度、或はバシーッと低く
入るタックル‥、そういった面を(それに絞って)磨き上げていけば‥、
そう思っていました。

が、(JAPANには、そしてJAPANを目指す選手達には申し訳ないが)もう、
白旗あげなきゃしょうがない、という気になってしまった。

昨日(7月10日)のTri Nations初戦 All Blacks vs Springboks at
Eden Park
この試合のAll Blacksの、ボール捌きやDFの出足や局面局面での反応の早
さ、(にもかかわらずの)精度の高さ、見事なタックル‥を見たら、かな
いっこない、これには勝てんわ、と、思い知らされた。
あ、いや、もちろん、これほどの「本気」をAll BlacksがJAPAN相手に発
揮してくれるとは思えないから、来年のW杯では、「ゆったり」構えている
であろうABsに対して、JAPANがどれだけ俊敏で果敢なラグビーをするのか、
これは依然注目すべき事柄なのだろうけれど。

ともかく、「かないっこない」と敗北宣言が浮かぶほど、アタックもディ
フェンスも容赦なかった。
DCやSmithといったBKももちろん見事でしたが、特にFWが凄かったなー、
久しぶりにTVに向って何度も拍手したぞ(又もハートマークを8つ並べたい
気分。笑)。
猛然とチャージにいけばいい →行ってる!
ガツガツ押していけばいい   →行ってる!
こんな全開で80分もつのかという位に走り回って‥しかも試合後そんなに
ヘロヘロしてなかった(!)
げっ、All Blacksってこんなに強かったんや(何年見てるねん、と突っ込
まれそう)、と驚きました。

客観的に判断して、現在の世界一はSpringboksだと思っていた。
All Blacksは、その少し下にいて、何とか這い上がろうと懸命にもがい
ている、と。
ところがどっこい。
Springboksの面々が、手に負えんな、とばかりに、思わず呆れ返った表情
を浮かべていたように見えた、それくらいAll Blacksは強かった。
32対12。All Blacks4トライに対しSpringboksは 4PGのみ。スコア以上の
完勝。

だけど再び冷静に分析してみて、All Blacksがダントツの横綱なのかと言
えば、答えはノー。
試合開始の直前まで崖っぷちに立っていたのは何と言ってもAll Blacksの
ほうだったのだから。
昨年3度相見えて3度とも敗れたAll Blacks。この日またしても勝てないよ
うであれば、それは単に今年のTri Nations制覇に暗雲がたれこめるに留ま
らず、国家的危機(大げさではなく)の様相を呈するだろう。
自分達がそういう瀬戸際に立っている事をAll Blacksはよくよく承知し理
解していた。だからあれだけ本気全開で力を出した。しかもホームゲーム。
勝って(値打ちが無いというのではないが)当たり前。勝たなかったらど
うする?という試合だった。

でも、マストウィンの試合で、安全策に傾かないで自分達の力を出し尽
くす、っていうのは、言うは易しだけど実は決して簡単ではないはず。
だからファンとしては素直に嬉しい。
一昨年のTri Nationsで、All Blacksが、前節までの泥沼から抜け出して
力強い見事な戦いを見せた時の、“ミスを恐れず前へ前へ出たら「ほらー、
こんなに強い」” (No.55) というあの感覚を思い出した。

その一昨年の“泥沼からの生還”。昨年の真っ暗闇の長いトンネルの最後
の最後に光明が―僅かなのにとても頼もしく―見えてきた戦い。そして
今年。
たった1試合終わったばかりだからまだまだこれから山あり谷ありだろう(
手に負えん、と匙をなげかかったようにも見えたBoksはそれでもかなり対
応してきてもいて、試合を崩壊させる手前で踏みとどまっていたのはさす
が。あの対応力と地力の高さに、私なんかは途中で「ABsはこれでもかとば
かりに手の内を晒しちゃっていいんだろうか、Boksの事だから絶対次は立
て直して来るというのに‥“奥の手”の一つや二つは残しておかないとい
けないのでは‥」などと姑息な事を考えてしまったくらいです)けど。

どんなに長く曲がりくねった道でも恐れずしっかり前へ進んで行けばい
いんだ、
All Blacksは、ちゃんとわかっているように見える。 

                        
                           2010/07/11 佳

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