No.133 2010 Tri Nations(〜第八戦まで)
この夏は筆がすっかり止まっていましたが、ラグビーを見る量自体少な
かった気がします(常翔学園の菅平合宿にも行けなかったし、明治も。
C大は見ましたが‥これは又改めて)。
PCで見られるようになり、私って天才かしらんと自画自賛までしていた
せっかくのITM Cupでさえ‥見てません。用事でというわけではなくて、
見るのを「忘れ」続け‥。うーん、SBWだ、Zacだ、ってすごく楽しみにし
ていたのに、何で忘れるかなあ(自分に聞け)。
Tri Nationsは忘れないから、週末、Tri Nationsのゲームの後にITM Cup
があるなら良いのだけど、逆なので、「さーあ、今週もTri Nationsだ」と
思ってはその度、「そう言えば‥昨日Canterburyの試合だった」「いけな
いっ、Hawke’s Bay‥終わっちゃった」と気づく。このパターンを性懲り
も無く毎週繰り返しています。先週末も、金曜のCanterbury、SBWのITM
Cupデビュー戦(故障だなんだといって結局今頃)をまたもやコロッと忘
れて見逃した。で、日曜のHawke’s Bayのゲームは今週こそ、と、原始的
に机に『ITM Cup』と大書したメモを貼って備えたのに、いざPCを開いた
ら、既に試合が終わっていた。‥NZとの時差を完全に間違えてました、救
いようの無い間抜けです。日曜は大会だったので、時差を間違えていな
かったとしても実際は見られない時間帯だったという事が不幸中の幸い
‥(なのだろうか?)。
そんなわけで、ITM CupはスルーしてとりあえずTriNations。
第一戦は、前回書いた通りABs圧巻のゲーム(スコア32-12 日付10 July
場所Auckland)。
今にして思えばこの初戦が今大会の行方というか流れというか、を決定づ
けてしまったような。
チーム間の優位性の面で、ABsのソリッドかつダイナミックなパフォーマン
スが、完璧に近いスタートダッシュとなったのはもちろんですが、流れと
いう意味でも、南アのLOボタがNZのSHカウワンに背後からのしかかって頭
突きを仕掛けたプロレスまがいのシーン、あれが案外影響したのでは。
試合中はレフリーが見過していてペナルティにもならなかった(のではな
かったっけ)けど、試合後は糾弾の嵐でした。確かに、非難されてしかる
べし。先にカウワンがノーボールタックルだったか何か、チャンスをつぶ
す妨害プレーをしたとはいえ、反則を犯した相手を罰するのはレフリーで
あって、やられたからといって決して自分がやり返したり(まして“頭突
き”など)してはいけない。自分でやり返してしまうボタは、単に「アホ
ですな」と思うのですが、世間的にはアホというより凶悪犯か悪魔の手下
かといった言われ方(カウワンの反則など殆ど忘れ去られている)。で、
「ダーティー」のレッテルがべったりと貼り付いたせいでこの後の試合で
も立て続けにカードを食らう事になったのではという気がするくらい、
Springboksはさんざんの有様で、アウェーでの序盤戦を終えたのでした。
教訓:安直な仕返しほど愚かな事はない。
第二戦 ABs vs Springboks (31-17/17 July/Wellington)
開始直後Springboksにカードが出された時点で雌雄は決した。好調のABs
に、14人の、ガタガタまとまらないチームが対抗できるわけがない。
ABsは、初戦があまりにも素晴らしかったので、(それに比べると)まあ
こんなもんだな、相手が酷すぎ、という気もしないではなかったですが、
それにしても、去年とは何という違いか。危なげ‥というよりひ弱さ、と
いうのかな、脆さ、そういったものが微塵も感じられない。揺らがず、
淡々と前進あるのみ。結果的にはそれが爆発的と言えるほどの勢いにつな
がっている。
第三戦 Wallabies vs Springboks (30-13/24 July/Brisbane)
この試合も開始直後のシンビン。こうなると最早Springboksは見るべきも
のですらないという気になってしまう。ま、元々がWallabies応援モード
ですが。WallabiesはFLとセンターが目をひきました。
第四戦 Wallabies vs ABs (28-49/31 July/Melbourne)
すっかり「カードづいて」しまったTri Nations。Springboks戦ではない
のに(笑)またしても。実はカードは両チームに出たのですが、特に
Wallabies(ミッチェル君)への1枚目のイエローはあまり必然性が感じ
られなくて、しかもこの後2枚目を貰ってしまったためレッド=退場となっ
たのですが、そのせいでせっかくのBledislor Cup初戦が勝敗という意
味で台無しになってしまった気がして残念だった。
それでも、それを差し引いてさえとても見応えのある試合でした。
第五戦 ABs vs Wallabies (20-10/7 August/Christchurch)
久々に1枚もカードが出ない試合で本当に良かった。それだけでなく、「
この試合を、サッカーのW杯みたいに地上波で放映さえしてくれればなー」
(そしたらどんなにか多くの人がラグビーに魅了されるだろう)と思った
ゲーム。惜しむらくは、Wallabiesは#12(双子ちゃん)がちょっと合って
ない、選手個人の能力としてはわからないけど、少なくともWallabiesの
ラインに馴染んでいないという印象だった。
第六戦 Springboks vs ABs 1週休みをおいての21 August、Soweto。
“プリントアウト版” のNo.127の項に書いたんですが、Super14決勝
の時には、土地柄、ブブゼラ(という名前はまだ知らなくて、ホーンと書
いていました)がうるさくてまいりました。さすがに“ラグビーではブブ
ゼラ禁止”だったので良かった。
鳴りものなしでも、9万4千という超大観衆で埋まったスタジアムは十二
分の迫力。
アウェーでのさんざんの序盤戦を終え、ホームに戻ったSpringboks。
いつもならば「ここからSpringboksの巻き返しが始まる、ABsは覚悟が
必要だぞー」と思うはずなのですが、今回は、試合前夜、何だか今年は(
ABs)「負ける気がしない」と感じていました。
しかし! 前の試合では“見るべきものですらな”かったのに、この試合
に布陣を入れ替えて臨んできたSpringboksは、まるで本陣を背負っての戦
の如き気迫のプレー。開始早々PGで3点を先制されましたがすぐ追いつき、
その後はお互い小刻みに点を加えながら(0-3、3-3、6-3、6-6、13-6、
13-9、16-9、16-14、19-14、22-14、22-17と推移)も常に一度も逆転を
許す事無く、試合時間はとうとう残り2分。正直 「‥こりゃ、予想(「負
ける気がしない」)がはずれるかも」と思いました。というか、この試合
は、Smitさんの100試合目のテストマッチというメモリアルゲーム。
試合前の国歌斉唱等のセレモニーに愛児2人(かわいい!)を抱きかかえて
登場したSmitさん、誇るべき100キャップ目を彼が今季初勝利で飾るのも
良いよね、と、半ばSpringboksに拍手を送っていたら‥‥ABsがトライを
とっちまいました(←私ってホントにABsのファンなのでしょうか‥)。
このトライが実はクセもの。まず、そこに至るまでのフォワードパス(ス
ローフォワード)が見逃された。最後の場面も、ヴィデオ判定でトライと
認定されたのだからそうなのでしょうが、「足が先に出てるんじゃないの
か? おいっ」と言いたくなってしまう(←私ってホントにRichieのファ
ンなのでしょうか‥)きわどさ。
いやー、これはSpringboksにとっては不運というか悔しいというか痛いと
いうか‥。コンヴァージョンははずれ22対22。
「ああ、せっかく勝てていたのに、同点かあ、惜しい」などと思っていた
ら、更に落とし穴が。なんと、ラストワンプレーで仕掛けたABsがトライ
(Six NationsでScotlandを襲った悲劇の再来のようですな)。22対29。
フルタイムの後、さすがに落胆の色の濃い(最後のトライには彼の痛恨の
タックルミスがあった)Smitさん。
けれど、見ている者の、そして恐らくBoks本人達の感触としても、手応え
はあった、と思う。
第七戦 Springboks vs Wallabies (44-31/28 August/Pretoria)
前週のSmitさんに続き、この日はマットフィールドのテストマッチ100試合。
こちらもSmitさんの時と同じように、どうしてこんなにと不思議なくらい
にかわいい二人の子供を連れての登場。果たして彼は試合後に笑える事が
出来るのだろうかと思ったら、第三戦とは違ってついSpringboks応援モー
ドになってしまった。
キックオフから僅か5分で2本のトライをとられたSpringboksが、それで
も折れずにすぐ反撃のトライを返し、そのあと再びとられてとり返して‥、
なんと開始15分で双方あわせて5つのトライという、お祭りみたいなゲーム。
結局前半は更に2つ、後半も2つで合計9トライ。Boksが勝利!
それにしても、今年のTri Nationsはトライ数が多いのが特長的。今迄こ
の3ケ国間のテストにはそんなにトライが出ない、それだけDFがすごくいい、
という事だったわけですが、今年は、その、すごくいいDFを、こじあけて、
翻弄して、なぎ倒して、という、防御の上をいくアタック力が鮮烈。
そして、先週末行なわれた(4 September/Bloemfontein)第八戦〜
Springboks vs Wallabies
前週に初の勝利をあげたものの、今大会<弱い><崖から転がり落ちて
いるよう>などと厳しい評価のBoksですが、試合開始前のメンバー紹介を
見ていてふと「この顔ぶれで<弱い>って有り得んよなー」とつくづく
思った(Wallabiesメンバーの顔ぶれが劣るという意味ではありません)。
というか、私としては、酷評にも頷かざるをえない序盤の3戦はともかくと
して、ホームに戻っての2試合ではむしろ<強い>と感じさせられていまし
た。でも個々の強さがバラバラにしか出ていない。<強い>はずなのに勝
てないのは、戦略やチームマネージメントの面での理由だろう。Wallabies
を破ってほしいというわけではないけれど、バラバラではない、ホントに強
いBoksが見たいなあ、という気がした。
‥のですが、期待空しく、開始15分でWallabiesが2トライをあげ3-17、
そして更に2トライを加えて6-31、一方的なスコアで前半終了が近づく。
しかし、最後の攻撃、サイレンが鳴り響く中、ボールをつないでつないで、
最後はJaque Fourie(やっぱ、Jean De VilliersとFourieとのセンター
陣は脅威)がトライ。まだまだ点差はあったけれど、このトライの見事さ
に、それまで失望とフラストレーションの固まりのようだった観衆の雰囲気
も一気にはじけました。
13-31からの折返し。
ここからのSpringboksの追い上げは凄さを感じたなあ。アタックの際の
ボールのつながりがとにかく印象的だったけど、中でも圧巻だったのは
Smitさん。Spiesがタックルされながら浮かした低いパスを、ギリギリ
のタイミングで片手で掴みとったプレーは、広島カープ赤松のミラクル
捕球と並んで今年の「ベスト・キャッチ」賞(そんなん、あるんかいな)
間違い無し。
77分。39-38。Springboksが1点差でリード。刻一刻と時間が過ぎ、つい
にラストワンプレー。そして、この試合でも又しても最後の最後に大逆転
劇が起こったのでした。
終了間際、ボールを保持し、モールからFWでのサイドアタック=モール→
サイド→モール→サイド‥を繰り返してタイムアップを待つ戦法をとって
いたSpringboksに、無情にもレフリーからペナルティの宣告。49mのPGを
カートリー・ビールが決め、39対41でWallabiesがマンデラ杯をかっさ
らった。
Boksは、犯則自体もだけど、“攻める姿勢で”じゃなくて“守りに入って”
負けたという事が悔やまれます。
というわけで、まだ最終週を残していますが、 Springboksの今年の
Tri Nationsは1勝5敗で終わりました。内ホームでの2敗はたまたま結果が
黒星だっただけで3勝3敗でもおかしくなかった位で、やはり何だかんだ
言っても強いなあとも思いましたが、惜しいところで勝ちきれないのにも
又理由がある。Habanaの不調は除くとして、例えば他の2国に比べるとDFが
やや組織だっていない気がする。それから、先程も書いた戦術面のお粗末
さは、第六戦、第八戦といった、両チームが紙一重で競り合う試合では
特に目立ったように思う。第八戦なんか、タッチキックをあれだけ毎回
カウンターされながらどうして懲りずに何度も同じ事をやるのか素人目
にも理解に苦しんだ(懲りずに毎週ITM Cupを見逃しているお前に言われ
たくない、と、M.Steynに怒られそう)。他にも色々雑なところが多いの
で、作戦を練り込んでもっと細かいところの精度をあげたら、絶対恐ろし
いまでに強いはず。<弱い>Boksなんかつまらないし、結局のところそ
んな相手に勝ったところであんまり嬉しくもないので、一年後のW杯には
必ず<恐ろしいまでに強くなって>戻って来いよっ(‥いつも、
Springboksの事を「コワいー」と怯えているくせに、ABsが強いと、
こうも強気の発言が出来てしまう)。
‥と、何だかBoksのことばかり書いてしまいましたが、勝った
Wallabiesももちろん良かったです。 O’Connor君、効いてましたねえ。
20歳にして代表チームに欠かせない存在、すごいわー。彼だけでなく、
全体に若いですよね、Wallabiesは(その分、南半球3ケ国の中で一番主将
に貫禄が足りないのも豪という気もするが‥笑)。Quade Cooperはどうし
ても好きじゃないけど(と、発言したら「どうして?」と不思議がられま
した‥すみません、単なる趣味です)、他のBK陣は、ちょっと99W杯優勝
当時のメンバーにも通じる魅力があります。
さあ、最終週は、そのWallabiesがABsの完全優勝を阻めるかどうか。
どちらのチームも積極果敢なアタック、攻撃的かつ安定感のある抜群の
DF‥互いに出来がいいだけに楽しみです。
2010/09/08 佳
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