No.144 脱線その2:反原発

引き続き“脱線”シリーズ。
今回は原発について。

1、原発は安全だ(「地震が来ても津波が来てもテロリストが爆弾を落とし
ても絶対安心です」というのが正に福島原発のうたい文句であった。←やは
り「うたい文句」とは「実態は違う」という事なのだ)。
2、原発は経済的=安い。
3、原発が無いと電力が足らない。
4、原発はクリーン(エコ)エネルギーだ。

これら1〜4が、まあ、原発というもののいわば「うたい文句」なわけだけ
れど、もうお察しの通り、全て「真っ赤な嘘」。以下、簡単にですが、順に
反論を記してみます。

まず、「原発は安全」、これが嘘だというのは誰もがわかったはず、少なく
とも1への反論はもはや不要、と思いたいところだけれど、未だ「今回の津
波は“想定外”の規模だったから被害が出たが、普通ならばこのような事態
になる事はあり得ない」と考える人もいるのかな。後(4)でも述べるけれ
ど、1000歩譲って「安全」に運転出来たとしてさえ、半永久的に残る核のゴ
ミを大量の生み出し続ける、人間の手におえるはずもないモンスターなのに

ところで今回の事故はまさに反原発の運動家や有識者達が<想定してきた危
惧>そのものだった。即ち、「大地震による大津波で非常用電源が2つとも
機能しなくなったらどうするのか?」。 
東大教授で現原子力安全委員長の斑目氏は「非常用発電機が同時に両方機能
しなくなるなどという事態は想定しておりません。そんなことまで想定して
いたら設計ができなくなる。そういう事例が(現実に)発見された場合には
多分真剣に考え出します。事例があったら教えて」と抜かしていたのだが、
出来すぎたブラックユーモア(と呼ぶには余りに空しいけど)ではないか、
「事例があったら」なんて。
この手の証言(暴言、妄言)は枚挙にいとまがないのだが、豆腐の上に原発
、と例えられるこの国にして「安全性」へのそもそもの認識や備えがこの程
度。設計上の問題、物理的な耐久年数の問題など相まって、「原発は安全」
の根拠など無に等しい、という事だ。


2の原発の経済性についての反論は、孫正義氏の講演(自由報道協会主催の
記者会見)を見ていただくと良いと思います。まだ見ておられなければ、か
なり長いですが面白く聴けますのでぜひご覧下さい。
http://www.ustream.tv/recorded/14195781#utm_campaign=twitter.com&utm_source=14195781&utm_medium=social
今回の事故で初めて原発について関心を持った“素人”の孫さんだからこそ
、全般に話がわかり易く、これ迄あまり勉強をした事の無いかたにこそ聞い
ていただく事をおすすめしたい。
細かい事を言えば、孫さんはネットの力をやや過信しているのではと思われ
る部分や、クリーン性にももっと踏み込んでほしいとか代替エネルギーの環
境問題にも更に配慮してほしいといった部分など、少し心配かつ不満もある
のだけれど、でも、反原発を宣言するだけで何かと波風がたってしまう日本
の中で、彼くらい知名度と経済力のある人が自ら先頭にたって行動を起こし
てくれた事に敬意を表したい。何より、未来の世界・子供達への思いという
ものが強いらしいのが伝わってきて、そこはとても共感できる。


3への反論は地上波TV以外ではもうどこにでも当たり前に出ている(笑)。
「原発無くても電力は足りる」「原発 電力 足りる」とでも入れて検索し
てみたら、わんさとソースが出てきますので読んでみて下さい。ちなみに、
私自身は、小出裕章助教が(「原発を今すぐに止めたとしたら・・?」と聞
かれて)「十分足ります、ですから、積極的に原子力だけはとめろ、という
事で動いてほしい」と言い切ったその一言だけで納得しました。このセリフ
は、下記のリンク(小出さんの講演)の1時間25分30秒からの質疑応答のと
ころで出てきます。全編は長いですが、時間の無いかたは質疑応答の部分だ
けでも見てみて下さい、なかなか本質的な内容ですので。
http://www.youtube.com/watch?v=4gFxKiOGSDk


4について。
原子力発電とは、単純に言えばお湯を沸かした蒸気でタービンを回して電気
を起こすことである。→お湯を沸かすための燃料の猛烈な高温を常に冷やし
続ける必要があり(これは今切実な問題になっているため今や日本人なら誰
でも知っている理屈)、実際には大量の海水で冷やし続ける。→熱くなった
海水を海へ戻す際、その温度は常に7℃~10℃ほど高くなって放出される。
サイダーとかビールを思い浮かべてもらうとわかるように、冷えた海水にと
け込んでいたCO2は海水温度が高くなった分だけ大気中に排出されていく。
つまり原発は「地球温暖化対策の切り札」どころか海面から大量のCO2を発生
させ、又、「たかがお湯を沸かす」ために自然界に存在しない猛毒物を大量
に作り出ししかもその毒性は永久的に無くせない
、という、クリーンどころ
ではないシステムだ。

更に、今回の事故でも防護服の映像を目にしない日はないが、平常運転時に
於いてさえ、こうした防護服、マスク、手袋、雑巾など大量の使い捨てゴミ
が毎日発生する。これのどこがエコか?


先ほどの1は原子力発電所そのものの安全性だったけれど、放射性物質の安
全性というものについてはどうか(と書いてから、安全な放射性物質なんて
あるかよ、と自分で突っ込みました。TVで「これくらいなら安全です」とい
うセリフばかり聞いているからといって麻痺しちゃいかんぞ、と言い聞かせ
ています)。

ちょっぴりその気になりさえすれば自分で勉強できる事ではありますが、政
府も、まずは国民に、「これより低ければ安全、という考え方が通用しない
(=しきい値が無い)のが放射性物質だ」という事を知らせるべきだ。
最低でもそれをはっきりさせた上で、そうは言っても放射性物質を0に出来
ない現実の中でどの位なら「ただちに影響はない」(←耳にタコだが・・)
と考えられるのか、という説明をするので無ければいけない。
それから、明らかに子供と大人ではリスクが違うという事も、これは責任を
持ってはっきり伝えなければならないはず。
なのに、今、福島県内の放射能値のかなり高い地域で学校が開校されている
のは、敢えて書くと、暴挙だと思う。本来ならば、子供達だけでも少なくと
も県外へ“疎開”させるべきだ。
家を捨てて出て行けなどという事を軽々しく言うな、と批判されるかもしれ
ない。いえ、当事者でなくとも、その土地で生まれ育った人、思い出をたく
さん持っている人、生きる糧や術やよりどころが全てその地にある人、そう
いう人達に向かって「福島なんかに残るな」と言う事がどれだけ相手を傷つ
けるかはわかっているつもり。だけど、だからこそ、放射性物質というもの
の実態やリスクをできる限り正確に説明して、その上で、<何を最優先に考
えるかをその人達が選択できる>ようにするべきだ。大人ならば、放射能に
よる晩成障害よりも、見知らぬ土地での不自由な生活のリスクのほうを高い
と捉える人がいても不思議ではない。でも少なくとも子供達は幼いほどリス
クも高く幼いほど新しい土地でもしっかり根をはって生きてゆけるのだから
、ぜひ疎開させてほしいと思う。
先日反原発デモに参加した際に印象的だったのは、もう何年も前から原発に
否を唱え、放射能の恐ろしさを勉強してきた人達の、今回の事故に際しての
行動の迅速さでした。
「事故後2日目に、東京から沖縄に引っ越した」「埼玉に住んでいたけれど
、今は大分の親戚のところにいます」・・「まあ、それにしたって安心って
わけじゃないけどね」←そうそう、昨日今日の中国からの黄砂を例にあげる
までもないけれど、放射性物質を載せた風なんて日本全国くらいすっぽり覆
っちゃうんだしね。
ちなみに長野、松本の放射能値も毎日発表されていますが、ああいう計測(
公式発表)値というのは、高い場所での値なので、実際の生活点(地面に近
い場所)だと3倍くらいになるらしい。
単純計算すると松本あたりだと年間1.5ミリシーベルトといったところ。「大
したことない」とも言えるけど、実際にはこれ以外に当然レントゲンやらも
あるわけで、少なくとも平常時の年間許容値を上回るのは間違いなさそう。
あー、もう、ホントに、大人はいいけどさ、子供達はどうなのよーって心配
です。この辺の子供達も外部被爆はともかくとしてとにかく内部被爆は出来
るだけ避けさせてほしい、ラグビーやる時にマスクってわけにはいかないの
が辛いのだけど、普段は出来る限りマスクをさせて下さい。お願いします。
ところで、もちろん反原発の面々は、そうしてなるべく放射性物質というも
ののリスクから遠い場所で日々の生活は送りながら、しかし、何か行動すべ
き時にはいつだってこうして交通費をかけて出てきてはデモ、申し入れ、座
り込み・・などを行っているのでした。今回も色んなところから参加者が集
まって来ていて老若男女で「原発イラナイ!」「子供を守れ!」「自然を守
れ!」「食べ物を守れ!」と賑やかに叫んで来ました〜。

さて、食べ物についても今盛んに“風評被害”などと言われていますが、「
たとえ基準値を下回っていても少しでも放射性物質に汚染されているのなら
摂りたくない、家族に摂らせたくない」と考える人を風評に踊らされている
などと誹るのは間違っていると思う。
皆が正しい認識を持った上で、「やっぱり子供には食べさせるのは良くない
から我が家では買わない」「学校給食には使わないよう運動しよう」「私達
は50歳過ぎてるから気にしない。農家の人達を助けるために積極的に買うわ
」といった風に、それぞれが選択できるべきでは。
国会議員の食事にはどんどん使おう。大手原発メーカーの食堂にも使えよな
、東芝とか日立とか三菱とかさ(悪いけど金輪際東芝の応援はしないと決め
た。やっぱ企業チームはこういう事があるからチームのファンになるのが難
しい。釜石、応援してます)。


本当は、企業批判やらマスメディアの報道というか立場の偏りやら(昨日飛
び込んで来たビンラディン殺害についてとか)についてもっと書きたかった
んですが、余りに過激になりそうで(脱線シリーズ冒頭に書いたように、あ
くまで個人見解ではありますが何かと差し障りもあるかと、穏健派をもって
する私としては一応配慮し)今日のところはこのあたりで切り上げておきま
す。

                        
                           2011/05/03 佳
                           
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